「木橋」 永山則夫
Amazonで見つけた作家としての永山則夫(連続射殺事件の刑死者)の短編集。
表題作は「新日本文学賞」受賞作であるが、本人の幼少期の体験そのものだ。
微に入り細に入り、住んでた地域の挿絵入り説明から、激しい虐待を受けてた兄、好きだったセツ姉さん、無関心だった母、新聞配達と出席しなかった学校のこと、そして、二十数回にわたる家出のことまで、小さい頃の自分の生きてきた軌跡を、N少年の眼として辿るように書いている。記録しとくように。
本人の精神鑑定の本でも読んだが、一つのところに落ち着くことなく、“行ける場所”を探して、常に逃げ回ってフラフラしてる様子が、収められた短編3作に共通している。
「愛」を知らない少年が、「愛」を求めて、長兄、次兄、三兄、そして、母のところへ行くものの、いずれも冷たく追い払われてしまう。学校や職場でも一緒だ。
とにかく、とことん暗くて、涙も枯れるほど悲しく、凍えるほど寒い文学だ。
永山則夫はやっと落ち着いて自分に向き合える場所を見つけたが、そこはいずれ必ず死がやって来る獄の中だったのだ。
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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。