【古典邦画】「雁の寺」

川島雄三監督の、1962(昭和37)年の大映作品「雁の寺」。原作は水上勉の小説。

京都のお寺の、愛人を囲う、なまぐさ和尚が、日頃から辛く当たってた13歳の小僧に復讐される(殺される)という話。実際に、由緒正しいお寺も出て来るから、この内容は問題になったのでは?

愛人の役が若尾文子で、ふと着物の裾からはだけた太股など、小僧ぢゃなくともドキドキするような、大人の女の色気に満ちており、この設定がピッタリだ。

高名な和尚となると破壊僧になるのは当たり前で、女を囲って肉欲に溺れるのが定番のように描かれている。

捨て子だった小僧が、和尚の下で修行の丁稚奉公をするが、和尚はしょっちゅう、小僧のミスを指摘して、平手打ちを喰らわせる。一方で、和尚は愛人との肉欲に溺れており、小僧は、そんな堕落した和尚を見ていて、憤懣やる方ない気持ちが高じて行く。

さらに、和尚の愛人が、小僧が可哀想だと彼に優しく接して、とうとう和尚が留守の時に身体で迫り一線を越えるのだ。

ある日、檀家が亡くなり葬儀を行わなくてはならなくなったが、和尚は出かけたまま、帰って来ない。それ以来、和尚は行方不明になり、小僧が和尚の代わりを務めるが、墓地まで運ぶ棺桶が異常に重い…。

実は、小僧が策謀して、和尚を亡き者としたのだ。そのことに気付いた愛人は驚愕して、茫然自失となる。

なんとも恐ろしい、戒律と欲との狭間で、犯罪を犯すことで、自らのことも含めて欲を否定し、戒律を守った小僧の狂気。愛人との交情がキッカケで、秘めたる嫉妬や憎悪が爆発するのだ。「私も和尚のところへ行きます」と呟く小僧が怖い。

さすが、川島監督、サスペンスとしても面白かった。

また、煩悩だらけのエロ和尚の、ニヤけた表情や京都弁で、クズっぷりが際立つねぇ。

きっと水上勉の小説も面白いだろう。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。