新潮社版「日本文學全集」島崎藤村2
新潮社版「日本文學全集」第7巻は、島崎藤村集の2だ。
1も暗くて重かったけど、2も同様だったなぁ。
中心の長編小説「家」は、何よりも家を重んじるという明治の家父長制度の中で、地方の旧家に産まれたという呪縛から逃れられない若者の悲劇を描いたもの。
新時代において、没落しかけた小泉家と橋本家が舞台で、家を助けて維持しようとする後継の息子らが悪戦苦闘する話で、最終的には、一方は、苦悩しながらも作家として大成することになるから、藤村自身がモデルになってるのかもしれない。
次の「桜の実の熟する時」は、もう文学青年の解決のない苦悩そのものといった小説で凹む。主人公の学生、捨吉が、2人の女に失恋して、新天地を求めて旅立ち、社会に出て行くといった流れ。
「ある女の生涯」は、実の姉の闘病の記録。病気というのは多分、統合失調症のことだ。前のカミさんのことを思い出して、フツーに辛かった。
そういや藤村ちゃんって、自分の子供が次々と亡くなったり、親父(だっけな?)と姉が狂って牢に入れられたり、姪と近親相姦になったり、こんな環境にいた者が小説を書くとメチャクチャ暗い苦悩の物語になるのは当たり前だろって思うよ。
妻を早くに亡くし、男独りで息子や娘を育てる様を描いた「嵐」はまだ微笑ましいところがあったから良かった。
人生は、まさに苦悩だ。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。