【映画】「スリ」
1959年公開のモノクロ古典映画「スリ(Pickpocket)」。
「抵抗」のロベール・ブレッソン監督らしく、主人公の青年の心の内面の動きとともに、スリという犯罪でも、そのテクニックなどが大真面目に芸術的に描かれる。当時、本国フランスでは“批評賞”を得た作品。
貧乏な学生ミシェルは、混んでる競馬場で女性客のバッグから金をスリ取った。彼は警官に捕まったが、証拠がなくて、すぐに釈放となった。これを機に彼はスリにのめり込んで行く。
ミシェルはスリの常習と睨んだ警部と話しをする機会を得て、彼が考える“盗みの哲学”を説く。
ミシェルはスリ仲間にスカウトされて、3人で組んで、駅や街で荒稼ぎする。
そんな時、彼は、病気の母を世話してる女ジャンヌに会う。2人は惹かれ合うが、スリ仲間が捕まり、ジャンヌが警察に呼ばれたこともあって、ミシェルは外国に逃亡。逃亡先のイギリスで、2年間に渡ってスリの生活をした。
帰国したミシェルはジャンヌの不幸な様子を見て更生を誓う。が、再度行った競馬場で警察の囮捜査にかかり捕まってしまう。
ミシェルとジャンヌは鉄格子越しに抱き合いキスを交わす。ミシェルは言う。「君に会うために、どんなに廻り道をしてきたことか」…。
駅の雑踏で、3人1組で素早くポケットや懐から財布を抜くテクニックは、確かに芸術的で、まるで職人たちの華麗な技のようになってる。財布を抜く手のアップがパッ、パッと切り替わっていく演出は眼を離せない。
それに卑劣な犯罪でも、セリフが詩的で哲学的でいかにもフランス的だ。ミシェルもジャンヌも笑うこともなく、忙しい雑踏の中にあっても暗い影のある無機質な表情からスゴい虚無・孤独感を感じる。
スリという犯罪は別にしても、ブレッソン監督がイメージする怒れる青年像なのだろうか。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。