【邦画】「夜の女たち」
溝口健二監督の、1948年公開の「夜の女たち」。YouTubeにて。
コレも主演は田中絹代で、街娼にまで身を落とした戦争未亡人らの悲劇を描く。
前半の夫の帰りを待つ健気な夫人と、後半の夫の死がわかって子供も結核で亡くし、生きていくために売春婦となった未亡人の180度違う演技はさすが田中絹代。売春婦のリーダー的存在となって、男に啖呵を切る様は堂に入ってる。
しかし、溝口監督らしく、未亡人は徹底して不幸である。なんとか勤め口を探したはいいが、そこの社長には愛人みたいな扱いをされて、実の妹と再会したけど、妹はその社長とできて、結局、梅毒を移され死産するし、社長は違法なことに手を出して警察に御用、お姉さんと慕ってた義理の妹は男に騙されて乱暴されて身ぐるみ剥がされて同じく売春婦になるし、結果、未亡人は、「とにかく誰彼かまわず寝て病気を移して男に復讐してやる」と恨み節。
収容された施設のドクターに、「復讐して残ったのは傷だらけの自分だけ」と諭される始末。
売春婦グループを抜けるのもリンチの洗礼が待っていた。
女がクズ男に頼り切って挙げ句の果てに騙されて捨てられてトンデモなく不幸になっていくという悲劇は、溝口映画の特徴の一つ。つまり、当時の封建的な社会やクズ男の犠牲となる女性をリアルに描いているわけだが、自己犠牲となってもさらに身を捧げるか、犠牲となって堕ちるものの、必死に闘っていくかのパターンがある。この映画は後者。
そして、主人公は娼婦や芸者など身を持ち崩した例が多い。
男はたいていだらしがなく無力で卑怯ですぐに女を犠牲にする。女を助ける力強い男は登場しないことが多い。助けるとしても老人。
この特徴は、溝口監督の経験によるものなのだろうか?それともサド・マゾ的な嗜好によるものなのか?
展開が、黒澤明監督の「わが青春に悔いなし」に似てるかもしれない。
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