【古典映画】「浪華悲歌」

溝口健二監督の、1936(昭和11)年の作品「浪華悲歌」。

戦前の作品であるが、“なにわえれじい”って、溝口監督だから、関西で不幸な境遇にある女の悲哀を描いたものかと想像できるけど、その通りであった。主演は山田五十鈴で、撮影当時19歳だったという。

電話交換手のアヤコ(山田五十鈴)は、会社の金を横領した父親のために、自分の会社の社長の愛人となって、借金を工面してもらう。
しかし、社長の奥さんにそのことがバレてしまい、会社を辞めざるを得なくなる。
次は、兄が大学の学費を払えなくなって、アヤコは、別の男の愛人となって、その男から金を奪って学費を払おうとするが、詐欺ということで警察に逮捕されてしまう。
付き合っていた恋人には逃げられて、警察を出て家に戻ると、父親も兄も妹も、「警察の厄介になるなんて、家の恥だ」とアヤコを非難、独り家を出て行く…。

貧乏が故に徹底的に犠牲になってしまう女を描くのは、溝口監督のお家芸だ。

しかし、アヤコが悲惨過ぎる。父親も兄も生活力がないクズ野郎で、ヘーキでアヤコに頼るし。

溝口映画に登場する男どもは、たいてい女を犠牲にして生きるクズ野郎ばかりだ。

アヤコも、さっさと家を出れば良かったけど、本来の家族想いの優しい性格から見捨てておけなかったのだ。

溝口監督は、山田五十鈴の起用を前提に脚本を書いたそうで、アヤコのような悲惨な境遇を強いられる女の役に、彼女の雰囲気がピッタリだったのだろう。つまりは、ドン底に落ちても逞しく生きようとする自立する女だ。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。