【古典邦画】「張込み」

松本清張原作映画第1弾、名匠・野村芳太郎監督の、1958(昭和33)年の松竹作品「張込み」。

久々に、主演ではないが、デコちゃん(高峰秀子)が出てる映画を観たと思ったけど、ラストの、刑事とデコちゃんの旅館でのやり取りは覚えがあるし、前に観たかもしれん。

2人の刑事が、殺人の共犯の男を追って九州・佐賀を訪れ、男が現れないかと犯人の昔の女の家を、前の旅館からずっと見張るというだけの単純な話だけど、女さだ子(デコちゃん)は、20も歳の離れたケチな銀行員の後妻となってて、あまり幸せそうではなく、前妻の子供達もなついてるとはいえずに、もの静かで地味で歳よりも老けて見えるような女であった。

張込み1週間目に、ようやくさだ子は動き、共犯の男と逢うが、彼女は見張っていた時と違い、男に激しく愛を誓い、行動を共にすると言うほどの情熱を刑事に見せる。

若い刑事は、自分がプライベートに持ってる問題もあって、さだ子を見張っている間に、彼女に共感・同情してしまうのだ。

あまり派手な動きはないものの、サスペンスではなくて、登場人物の心理に迫った良質のドラマだった。

デコちゃんが演じる、地味に同じ日常を送る面と、昔の男に対して激しい情熱を見せる面とを併せ持つさだ子は、とても魅力的に見える。なんとも言えぬ悲哀に溢れて。女は覚悟を決めると強い。

人間は、普段の社会的な一面よりも、枠を超えた欲に従った真実を見せた時が一番、魅力的なのかもしれない。

当時は、冷房もない機関車に乗って、横浜から佐賀まで20時間もかかったんだね。松本清張原作らしく、駅や構内、機関車、車内もシッカリと見せる。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。