「私は貝になりたい」

前に、中居くん主演の映画を観たので。

元ネタとなった元陸軍中尉・加藤哲太郎氏の獄中手記「狂える戦犯死刑囚」である。

戦時中、加藤氏は、中尉として、確かに部下に俘虜の殺害を命じて、戦後、各地を逃亡していたが、結局、逮捕されて、BC級戦犯として巣鴨プリズンに拘禁された。

一旦は絞首刑の判決を受けたが、映画のように処刑されることはなく、家族等がマッカーサーに提出した助命嘆願書が功を奏し、書類審査による再審で禁固刑に減刑されたようだ。

加藤氏が獄中にいる際に、体験を元に架空の人物で小説のように書いた遺書のようなものが、TVドラマ「私は貝になりたい」になったのが最初である。

そのTVドラマも、マスコミらしく、加藤氏に一切伝えることなく、脚本家が勝手に手記を引用したようで、テレビ局と加藤氏の間で著作権を巡ってかなり揉めたらしい。まあ、「私は貝になりたい」が公に世に出るまでにスッタモンダあったわけだ。

手記で加藤氏は書く。(以下、略)「戦争は人間を発狂させる。殺人が最も大きな美徳とされる。戦後、あの時、なぜ自分はあんな馬鹿なことをしたのか、不思議でたまらないのである。戦地から帰った時、そして、平和が再び訪れた時、兵隊は良心の呵責に責められる。兵隊は考えてみる。もし自分が戦争に行かなかったならば、あんな事はしなかっただろうと。彼は罪を命令や戦争に帰してしまって、後は知らん顔する。そして多くの場合、嫌なことを忘れようと努力し、やがて本当に忘れてしまう。罪を戦争に帰して後は知らん顔をする。この知らん顔が曲者である。罪を犯したと思えばこそ、知らん顔をせざるをえなくなるのだ。だから、罪は戦争にあるのではなく、戦争に参加した各人にある」。

この遺書は、コレに尽きるな。超A級戦犯であるヒロヒト天皇をはじめ、全ての戦犯、戦争参加者に言えることかもしれない。

「天皇陛下よ。なぜ私を助けてくれなかったのですか。きっとあなたは私たちがどんなに苦しんでいるかご存じなかったのでしょう。もし私が今度日本人に生まれ変わったとしても、決してあなたの思う通りにはなりません。今度生まれかわるならば私は日本人になりたくはありません。いや私は人間になりたくはありません。牛や馬にも生まれません。人間にいじめられますから。どうしても生まれ変わらねばならないなら、私は貝になりたいと思います。貝ならば海の深い岩にヘバりついて何の心配もありませんから。何も知らないから、悲しくも嬉しくもないし、痛くも痒くもありません。頭が痛くなることもないし、兵隊にとられることもない。戦争もない。妻や子供を心配する事はないし、どうしても生まれ変わらなければならないのなら、私は貝に生まれるつもりです…」。

手記に書かれた元ネタの文。慟哭のような叫びである。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。