「雁の寺・越前竹人形」
まさに、人が奥底に持つ“業”を感じる珠玉の名編であった。
「雁の寺」は、最初に、若尾文子が愛人・里子を演じる映画(川島雄三監督)を観た。「越前竹人形」も、まだ観てないが、同じく若尾文子が妻の玉枝を演じる、吉村公三郎監督の作品がある。
捨て子であった小僧の13歳の慈念が、愛人・里子を囲う和尚の慈海を策略のうちに殺めるという「雁の寺」と、竹細工師であった父親の愛人・玉枝を、自分の妻とした後継ぎの一人息子・喜助だが、彼は玉枝に、亡き母を重ねて、妻として肉体関係を決して持たなかったことから来る悲劇の物語である「越前竹人形」。
寺の行の合間に、愛人への肉欲と和尚への嫉妬という孤独な怨念を発散させる慈念と、竹細工の匠の仕事の合間に、頑なに妻への肉欲を拒否する醜い小男・喜助の孤独と、それ故に、妻は昔の男に無理矢理、言い寄られて、赤子を宿してしまうという悲劇と。
日本的情緒を背景にした、儚くも激しい孤独な情念を凝縮させた“秘め事”を名文で描いた2篇。
慈念も、喜助も、いびつなブ男であり、愛憎か、肉欲か、決して穢されない純潔かで、周りは困惑するけど、一本筋の通った激しい情念というべき思いを持つのだ。
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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。