「ネオナチの少女」
まず、戦後70余年も経った近年のドイツで、ナチス信仰をベースとする極右勢力の存在が決して少ないわけではないという現状に驚いた。「マインカンプ」が発禁になるわけだ。
著者は、大戦後に、新たに興った「ネオナチ」ではなくて、ナチス時代を体験した祖父から続く「正統派のナチ」だったのだ。
父親はヒトラーの崇拝者、親族や付き合いのある人も全てナチで、幼い頃から日常、生活の全て(髪はお下げ、常に民族衣装、英語禁止、アメリカ製品禁止…)、ナチズム式の教育を受けて育てば、ナチになるのは当たり前だ。
さらに、ヒトラー・ユーゲントの再現である「ドイツ愛国青年団」に加入して、軍事訓練を受けて、人種学を教わるという…。
「私は、ただ目の前の道を歩いて行っただけ。その道が右へと曲がっていた」
味方のナチの集会で気勢を上げる、敵の集会に乗り込み暴れる、ポリスの厄介になる等、暴力とヘイト(憎しみ)の日々を送る中で、同じナチの青年と恋に落ちる。
酔っ払って暴れて、キレイな少女とヤルことしか考えてない他の男たちと違って、その青年は魅力的だった。
青年も著者も、それまでの自分の人生に疑問を感じ始めるようになってくる。ナチスの被害を書いた小説を読んだことも影響する。そして、妊娠(最初の妊娠は流産することになるが)。
「娘から母になったその瞬間、ナチのイデオロギーはその魅力を完全に失った。自分の人生が自ら選んだものではなかったことに気付いた」
ナチの組織からの脱退を決意してからの2人の行動は早い。
ナチ仲間には“裏切り者”として狙われることになったが、2人は同じように脱退したいと望んでいる人たちの役に立とうと考え、そのための支援団体を設立するに至る。ようやく人から押し付けられたのではない自分で選び取った人生を手に入れたのだ。
2人は結婚して子供をもうけ、著者は現在、保育士として働いているという。
ネオナチに参加してしまう若者たちは、ナチズムの思想(知らない若者も多い)に共鳴するというよりも、日頃の不満や不安の捌け口として、自分らと違った人間を、憎んで、攻撃して、暴力を振るうことに満足感を得ていることが大多数だ。それは日本でも同じであろう。
規律や秩序、民族の優位性、ストイックさ、黒でクールなイメージ、破壊と暴力のカタルシス…ナチズムに対する魅力は人間の根源的なものとも結び付く部分があるために、何年経とうが小規模でも復活の可能性は大きい。狂気に陥らないためにも、狂気を知っておくべきだろうと思う。
プチナチヲタの俺は昔、黒のMA-1のジャンパーにフレッドペリーかベンシャーマンのシャツ、リーバイスのジーンズをロールアップしてドクターマーチンの赤ブーツという、スキンズ(ネオナチ)ファッションでキメてた時期もあった。
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