「三島由紀夫 最後の言葉」
かつて、書評紙「図書新聞」に掲載された文芸評論家・古林尚(タカシ)氏による三島由紀夫へのインタビュー(新聞発行は昭和45年12月)と、三島関連の記事を集めたもの。
来る11月25日に合わせて発行されたのかしら?
自決の1週間前のインタビューによる最後の言葉で、「いまにわかります」、「もう、この気持ちは、抑えようがない」は、よく知られていた。このインタビューも何かで読んだことがある。
だから目新しいものはないわけだが、三島の右翼的行動に反発して、その主旨を理解しないインタビュアーだからこそ、三島の心情が吐露されてるように思う。
三島美学の根本には、戦後の相対主義から脱して、絶対者に到達したいというニーチェのような願望が強烈にあったと思う。
日本における絶対者は唯一、天皇であって、その天皇に殉じて、若き肉体と共に、純粋に美しく死ぬことで崇高な絶対的な美に到達することを真に望んだのだ。
それは作法に則った切腹だったわけだが。
つまりは自己を捨てて命を捧げることに価値を見出すエロティズムの極地といえる。
そこに至るまでの現実的なことや政治的事情、矛盾、行動はどうでもよいこと。
死が全てを洗い流してくれるから。
三島にとっては現実的な天皇や政治など、美学を完成させるための材料であって、全く関係のないことなのだ。
「僕は彼らの手には絶対乗らないつもりで、もう腹を決めてます。長い目でご覧ください。僕だって奴らが利用してることは百も承知です。奴らは、バカが一人飛び込んで来て、てめえの原稿料をはたいて、俺たちのタイコを叩いてくれるわいと、きっとそう思ってるでしょう。今の時点では。僕も、そう思わしておくことが有利だから、今はそんなフリをしてるだけです。僕は最終的には奴らの手には乗らないです」…。
三島由紀夫を理解してる人なら、当時、彼が死ぬことを予感できたと思うけど。