【洋画】「ベルリン・天使の詩」

昔、観た時は、えっ、フツーのオッサンが天使かよって思ったけど、ニック・ケイブ&ザ・バッドシーズとローランド・S・ハワードのステージ、それに刑事コロンボのピーター・フォークがめっちゃクールに思えた、ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩(Wings of Desire)」(仏・西独合作、1987年)を、Amazonプライムで。

東西ドイツに分かれていた頃のベルリン。荘厳な曲が流れて、瓦礫が散在し、アチコチでドラム缶の焚火の炎が上がってるような、寒くて暗〜い、灰色の街。まさに、E・ノイバウテンの過激な叫びとメタルパーカッションがピッタシの廃墟(クロイツベルク)。唯一、ベルリンの壁に描かれた極彩色のアート作品だけが未来を感じさせる場所。

そんなベルリンの街を見下ろすオッサン守護天使ダミエル。天使を見ることができるのは子供たちだけ。彼は、ココにいる人間たちの背後に寄り添い、暖かく見守って来たが、同じ親友のオッサン天使に、「永遠の命を放棄して、人間になりたい」と打ち明ける。サーカスの空中ブランコ乗りの女性マリオンに惹かれたからだった。人間に恋をすると天使は死ぬのだ…。

台詞は全て詩のようで、オッサン天使の耳には、ベルリンにいる様々な人間たちの心の嘆きが入って来る。灰色の街に反するようなヴェンダース監督の演出するロマンティシズムが、とても人間的で暖かくて美しい。

絶望の淵にあったマリオンの「誰かを愛したい」という嘆きに惹かれて、下界に堕して人間として彼女に逢いたいと願うダミエル。

不幸な現実や過去に苦しむ中でも、一つの愛の可能性を謳い上げた、ヴェンダース監督の人間讃歌の物語だと思う。

ピーター・フォークが、コロンボ役そのままで、撮影のためにベルリンを訪れていたという設定だが、彼は元天使であり、見えない天使に盛んに語りかけて、人間になりたいというダミエルに人間界でのアドバイスを送る。

普段の人間界は醜だが、愛を謳い上げる時には、天使をも超える崇高な美を纏うのだ。優しい愛の映画だ。

ヴェンダース監督の作品は、とにかく絵がキレイだ。この映画、小津安二郎にも捧げられてるんだよな。ニック・ケイブのライブで、日本人の女の子がいた。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。