【古典邦画】「細雪」
1950(昭和25)年の、阿部豊監督の作品「細雪」。画質は悪いけどYouTubeにて。
没落ブルジョア一家の斜陽を描いた谷崎文学の大傑作「細雪」だが、前に観たのは、1983(昭和58)年公開の市川崑監督の作品だった。「細雪」は3回、映画化されているが、コレは最初の映画化作品。
四姉妹、長女・鶴子が花井蘭子、次女・幸子が轟夕起子、三女・雪子が山根寿子、そして、四女・妙子をデコちゃん(高峰秀子)が演じる。
四姉妹を描いた映画は洋画にもあるが、旧家である藤岡家を必死に守ろうとする者、夫の仕事の転勤に伴い家を離れる者、別宅で暮らす者、見合い結婚が上手くいかない者、外に出て活動的で男遍歴を繰り返す者…とそれぞれ。
だけど、四姉妹の仲は崩れるものではなかった。
やっぱり四女の妙子を演じたデコちゃんが一番突出して輝いて見える。唯一、常に洋装だし。他の女優さんは知らないし。
“こいさん”こと妙子は、スポンサーとなった他家のぼんぼん息子と駆け落ちして新聞に書かれ、台風による大水害で助けてくれた写真家と恋仲になるが彼が病気となって死に別れて、次はバーテンダーの男とくっ付いて妊娠流産騒ぎ、刹那的で自暴自棄な面もあるが、当時としては自由奔放に生きる“新時代”の進歩的な女性なのだ。
旧家という家柄と、伴う世間体とプライドを保って生きて来た四姉妹だが、時代の流れと共に、徐々にそれも崩れて保っていられなくなる。上手く男の間を立ち回りつつ、金がないと言いながらも、どうしても贅沢が忘れられないの、と嘆く妙子のセリフが、消えゆく旧家を表していると思う。
市川崑監督版は、四姉妹の着物や京の風景など、カラーだけに色彩的に艶やかで素晴らしかったが、コレは、妙子を中心とする四姉妹の人間性に迫った感じだ。
迫力ある大水害の洪水のシーンはどうやって撮ったのだろうか?特撮なのか?多分、かなりの制作費をかけたんじゃないだろうか。