【洋画】「レ・ミゼラブル」
ヴィクトル・ユゴーの大河小説「ああ無情」は、小学生の頃、担任の女先生が、児童文学の抄訳を読み聞かせてくれたのを薄っすらと覚えてる。ジャン・バルジャンが、たった一個のパンを盗んだだけで、長い間、投獄されたってのを知って、ケーサツに捕まることの恐ろしさを知ったような気がする。
2012年のミュージカル映画「レ・ミゼラブル(Les Misérables)」(英米合作、トム・フーパー監督)。
ロングランで公演されてたミュージカルの映画化。2時間半超えと長いけど、ミュージカルでセリフが全て歌、しかも感情むき出しで懸命に歌うせいか、面白くて集中して最後まで観れた。
しかし、悲劇に次ぐ悲劇の連続の物語なんだねぇ。
貧乏な姉の子ども達のためにパンを盗んだという罪が、ほぼ一生、ジャン・バルジャンに付いて回るとはね。
ジャン・バルジャンが改心して、自分が傷を負うことになっても、徹底的に徳と奉仕の精神を示すことで、保釈中に逃亡した彼をシツコク追いかけていた私服警官は追うのを止めて自殺、成功した彼が営む工場で働いてて死んだ未亡人の娘コゼットは美しく成長して、1832年のパリ蜂起の闘志の学生マリユスと悲劇の末に恋に落ち成就、ジャン・バルジャンは老齢になってやっとこさ安らかな気持ちを得て修道院に身を隠して死ぬことに…。
やっぱり罪と罰が大きな意味を持つキリスト教の価値観だよね。
19世紀初頭のフランスの下層階級の人間たちが登場人物だから、皆、ビンボーでなりもメッチャ汚い。ジャン・バルジャンが下水に落ちてマリユスを助けるところなんか、多分、糞尿だらけで臭い立ってくるようだ。カワイイ女の子もあちこち垢などをくっ付けてるし。
そんなところが気になっちゃう俺だけど、革命へと立ち上がる学生を結局は裏切る市民たちから、客を騙してモノを盗むことしか考えてない、コゼットを預かり虐待していた宿屋の夫婦、教条主義的で決して情を許さない私服警官、犯罪者集団パトロン=ミネット…等、いわゆる“悪”が跋扈する中で、そんな混沌の世界をリセットするような革命への盛り上がりを背景に、パンを盗んだ1人の囚人が、神に愛される聖人へと成長して生涯を終えるまでの物語だね。
ベースに流れているのは、揺るぐことのない絶対的な“愛”である。
作者のユゴーが意図するものは、たくさんの悲劇に見舞われても、徹底して愛を貫くことで、最期は神の下へと召されるということで、キリスト教の価値観を全面に出した壮大なドラマゆえに西洋ではウケたのだろうと思われる。
ラストに、死んでいった登場人物たちが全員集合して“明日”を唄う姿は感動なんてものじゃない、ちょっとなぁ…。ひょえええええ。