【古典邦画】「裸の十九才」
新藤兼人監督の、1970(昭和45)年のモノクロ作品「裸の十九才」。新藤監督らが作った映画会社「近代映画協会」の記念作品。
1968年に発生した永山則夫連続射殺事件をベースにしたもので、新人だった原田大二郎の主演で、彼の生い立ちから、事件を起こして捕まるまでを描く。
この時点では、死刑が確定するのかはわからない。1987年に死刑判決、1990年に確定、1997年に執行となった。母親役は乙羽信子。
永山則夫については、「無知の涙」他、彼の著作も、彼が起こした事件の詳細を解説した本も読んだので、だいたいことは知っているが、両親から育児を放棄された完全なネグレクトであったことと、赤貧の中で飢える環境に置かれたこと、身内から長期間に渡って暴力を受け続けたこと、充分な学校教育も受けなかったことに、道を外れた大きな要因がある。
しかし、まだその詳細が明らかになっていない時点での映画だから、徹底した貧困が彼の性格を歪めたように描かれている。
やはり、何事にも不安で我慢ができずに決して満足することがなかった性格となって、集団就職で上京するものの、すぐに辞めて(渋谷の西村フルーツパーラーだった)、職を転々とし、身近な人のちょっとした一言で、すぐに失踪したりしている。
親(特に母親)の情愛を全く知らなかったので、どこかに、親に愛してもらおう、褒めてもらおう、認めてもらおうという心情が働いている。
明るさの微塵もない、メッチャ暗くて、ヘビーな内容だが、底辺に落ちる原田大二郎(見た目は背が高くて垢抜けており永山則夫って感じぢゃないが)や、貧乏が身に付いた乙羽信子(裸でまぐあいのシーンがある)の体当たりの演技は素晴らしい。
東北の、雪深い山村の、ド貧乏で、常に懐疑的な嫉妬の目で人を見るような、それでいて性欲だけは旺盛な…差別になるから止めた(笑)。