映画「不道徳教育講座」
Amazon primeで、三島由紀夫原作の「不道徳教育講座」(西河克己監督)を観た。1959年のモノクロ作品。
冒頭と最後に、三島由紀夫本人がナビゲーターとして出ている。三島マニアの俺には、例え台詞が棒読みでも、スーツを着こなした三島は、めっちゃクールでダンディに思てしまうね。
主人公となる大坂志郎がちょっとイメージに合わない気がするけど。
殺人以外あらゆる犯罪に手を染めたという不道徳な藤村は、刑務所を出て来たわけだが、自分と瓜二つの文部省役人で道徳教育の権威、相良と入れ替わり、道徳教育のモデルとなる信州の地方都市で、ひと騒動を起こすといった内容だ。
当時の文化風俗や、アプレゲール(戦後派)な若者がふんだんに使われて、日本型の、軽いウィットに飛んだデカダンスな雰囲気で、まさに“昭和”ど真ん中って感じで、最後まで飽きることなく観れた。
道徳を声高に叫ぶ人間が、裏では欲にまみれた不道徳だったり、不道徳を気取る人間が、常識を大切にして、他人に戦前からの道徳を押し付けたり、ちゃんと押さえるところは押さえてる。
道徳教育くらい大きなお世話でくだらないものはないが、道徳は人が集まれば、上手くいくために持たなきゃならない社会的ルールみたいなものだと思う。教えられるものではなく、自然と身につけるものだ。
道徳を持つ人間が内心は不道徳で、不道徳な人間が道徳を重んじたり、人間というのは常にアンビバレンツで矛盾した生き物なのである。
高級官僚となった犯罪者、高額な補助金に眼がくらんで道徳教育を押し付ける市長、汚職に手を出している校長、若い運転手(ビルダー)の肉体に燃える人妻、女はこうあるべきと訴える道徳教育反対の活動家、同級生に処女を捧げる権利を売る清純な女子学生、ドンファンを気取る童貞学生、ピストルを作り完全犯罪を目論むマジメな学生…。
とんだ連中揃いだが、風刺の効いた流れは、原作者の意図に沿ったものだと思う。
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