「命売ります」
古本。再読。
自殺に失敗し死ぬことに疲れた青年、羽仁男が、どうせ儚い命、いっそ誰かに買ってもらおうと「命売ります」の新聞広告を出す…。
雑誌「プレイボーイ」に掲載された、純文学ではない、大衆ウケを目論んだと思われる、平易で軽快なタッチのエンタメ小説だけど、やはり三島の“死への憧憬”が節々に吐露されているように思う。
死を全く恐れない羽仁男が、広告を見てやって来た数々のヘンな連中と絡む中で、死を恐れるようになるという逆説の物語。そこに三島らしいハプニングも忘れない。
ラスト、刑事が「命を売る奴は法律に触れるわけではないが、人間の屑だ」と言い放つ。コレも逆説。
凡庸な日常に憧れて“普通”ではないことを嫌がるものの、その“普通”はホンの些細なことで脆くも崩れ去る危うさを持っている、ということを表したとも読める。
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