【古典映画】「瀧の白糸」
活弁入り映画って初めて観たよ。
溝口健二監督の、1933(昭和8)年のサイレント映画「瀧の白糸」。
1933年は第二次大戦前でドイツでヒトラーが政権を掌握した年だけど、よく消失しないでフィルムが残ってたものだ。フィルムは傷が多いけど。
話の流れを観てると、不幸に見舞われても何とかハッピーエンドで終わる予感があったのだが、主演の2人とも死んじゃうなんて、思わず、「そりゃねえだろう」と呟いちゃった。原作は泉鏡花だったんだ。
水芸をやる人気者の旅芸人“瀧の白糸”こと水島友(24)は、旅先で知り合った青年、村越欣弥(25)のきっぷのいい性格に惚れて、法律の勉強をしたいという貧乏な欣弥のために貢ぐことを決めた。
欣弥は、東京に行き、友(トモ)の仕送りで学校へ、法律の勉強に精を出す。
友の夢は法律家となった欣弥の、カタギのおかみさんになることだった。
しかし、水芸は夏限定の季節もので、やがて客の入りも悪くなって、友は欣弥への仕送りも苦しくなってくる。
それでも何とか仕送りのお金を工面するが、その金が奪われることに。
高利貸し一味が友の身体目当てで仕組んだ事と知った友は、逆上して高利貸しを包丁で刺してしまう。
友は逃げ回るものの、結局、捕らわれの身に。
そして、裁判で彼女を裁くために法廷に姿を見せたのは、検事として立派に出世した欣弥だった。
友は自殺を図るが、殺人罪で死刑の判決が下り、舌を噛み切って死ぬ。
恩人を裁いたジレンマに苦しみ、仕送りの金は高利貸しから奪ったものと知った欣弥も責任を感じてピストル自殺を遂げる…。
水島友を演じたのは入江たか子だが、プロローグでは男嫌いだった彼女が、惚れた欣弥の前では、乙女のように恥じらいを見せつつも、色気を武器に欣弥に迫り、「貢がせておくれよ」と関係を迫る演技が、活弁入りの無声映画であっても、古典映画らしく大袈裟でコミカルでも味があるね。
結局、友も欣弥も死ぬことになる悲劇であるが、溝口監督らしい徹底的に犠牲になる女を描くってのはここからも健在だね。
自分を犠牲にしても、惚れた苦学生を助ける旅芸人の女。溝口監督が好む設定だと思う。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。