【洋画】「冬の旅」
ヌーヴェルヴァーグの祖母、アニエス・ヴェルダ監督の、1985年の作品「冬の旅〈さすらう女〉(Sans toit ni loi)」(フランス)。Amazonプライムにて。
真冬の南仏を、寝袋とリュックを背負って、あてもなくヒッチハイクしながら浮浪する18歳の少女モナを追ったロードムービー。
彼女はなぜ、浮浪を続けているのか、どこから来たのか、素性が明かされることはない。
「彼女は海からやってきたのかもしれない―」。
農村の畑の片隅で、汚いなりで行き倒れになって、冷たくなっているところから始まり、その数週間前までに出会った人々の証言によって綴られていく流れ。
モナは、出会った人々と交流して、泊めてもらったり、仕事を手伝ってお金を得たり、食料を分けて貰ったりする。が、親しくなった人に自らの過去を少し語ることはあっても、決して心を開くことはなく、いつの間にか飛び出して浮浪を続ける。
「私は楽をして生きたいの。人に使われるなんて真っ平」。
シャワーもしないから髪は汚れで固まって臭気を発している。完全なる自由を得てはいるが、孤独と命の危険にさらされて、いつしか犯罪を生業とした、空き家を根城にする浮浪者グループと生活を共にするようになる。結局、そこも飛び出すことになるが、ついに力尽きることに…。
実話ベースらしいが、今の社会で完全なる自由を得ることの意味のなさ、完全なる自由に人は耐えきれないこと、楽な生き方は楽ではないこと、孤独は人を疲弊させること、結局、完全なる自由は死であること…を考えさせる、厳しくて寂しい、哀しい作品であった。
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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。