【邦画】「父ありき」
小津安二郎監督作品。1942年(昭和17年)の「父ありき」。
小津安では珍しく、父親と息子の関係を描いた作品。コレも古くてノイズが気になったけど…。
金沢の中学教師である堀川周平(笠智衆←まだ若い彼が老人の役も演じた)は、妻に先立たれて、小学生の息子の良平と2人暮らし。
しかし、堀川は、修学旅行先の事故で生徒が死んだ責任を取って辞表を出して、息子と故郷の信州に帰る。
信州では村役場で働くことになるが、息子の良平が、中学に進学して寮に入ったことを機に、さらに上の学校へ進学させるために、堀川は単身、上京して工場で働くことに。
数年後、良平は大学に進み、秋田の学校で教職に就く。
…久々に父親と温泉宿で再会した良平は、父親に、「教師を辞めて帰って来るから、一緒に暮らさないか」と告げる。
しかし、周平は、「今の仕事を投げ出してはいけない。教師は立派な職業である」と息子を諭す。
周平は、金沢の教師時代の同僚や生徒たちと再会して酒を酌み交わす。
楽しいひと時を過ごした周平であったが、急に具合が悪くなって倒れ、「後は頼む」と言い残して死んでしまう。
良平は、周平の教師時代の同僚の娘ふみと結婚する。
良平はふみと共に父親の位牌を持って秋田に向かう…。
フツー、親父と息子は、ある年齢に達するとライバルのように仲違いすることが多いのだが、母親が早くに死んで、父親に苦労して育てて進学させてもらったという思いがあるためか、最期まで一緒に住んで世話をすることを望んでいた息子・良平。ラストに、妻と秋田に向かうのも、死んだ親父のためである。
エディプス・コンプレックスの裏返しみたいだけど、父親は、息子に幼少期から“独立”を意識して、レールは敷くから、自分のことは構わずに自分の道を進めと進言する。
息子の真の独立となる妻をめとることが決まって、父親は“父としての仕事は終わった”とばかりに宴の後に倒れてしまう。
コレは小津安映画の定番の展開で、やはり“無常迅速”を表現したものだと思う。
この映画の後、片親というシチュエーションが使われることになる。
父と子で、釣りをして、温泉に入って、酒を呑んで、語り合って、子は父にお小遣いをあげる…小津安の憧憬かもしれないが、俺は全くこんな経験がないままに親父は死んじゃったので、親父となんて…って、ちょっと気持ちが悪くて理解できないけど(笑)。
さて、これで現在、DVD等で観れる小津安二郎作品は全て観たと思うけど…。まだ観てない作品、あったかなぁ。