事例から紐解く技術カンファレンスでの戦略的ブースコミュニケーション設計
こんにちは。ログラスでProductHRをしている永井(@tomoka_nagai)です。
この記事では、技術カンファレンスでのスポンサーブースにおける戦略的コミュニケーション設計について、『開発生産性Conference 2024』『Platform Engineering Kaigi 2024』の2つのカンファレンスを事例に書いていきます。
記事にした背景
ログラスではProduct Team Brandingの一環としてカンファレンススポンサーに力を入れており、6から7月にかけて3つのカンファレンスでスポンサーブースを出展しました。
私はこのうち2つのカンファレンスで全体PMを担当しましたが、これまでブース出展の経験がなかったこともあり、最初はどんな戦略のもと、参加者に何を伝え、どんな成果を期待するのか、かなり手探りな状態でした。
そのような中でも他の運営メンバーと協力して準備を進め、戦略的なコミュニケーション設計に手応えを感じることができたので、同じように悩む人の参考になればと思い記事を書きます。
戦略的コミュニケーション設計とは?
ここでは戦略に基づいて、ブース企画・ノベルティ/配布物・SNS拡散などの一連のコミュニケーション設計をすることを「戦略的コミュニケーション設計」と呼んでいます。
これは今回PMをした私の反省点でもありますが、最初に「ブース出展の中身を詰めていくぞ!」となった時に、戦略をしっかり決めないままブースの企画検討を始めた結果、途中で「ターゲットと目的がブレて意思決定しづらい」という状況に陥ってしまいました。
その後、後述する戦略をしっかり決めた上で戦略に紐づいた各種コミュニケーション設計をした結果、運営メンバーの共通認識もつくりやすく、いろいろな意思決定もスムーズになり、戦略的コミュニケーション設計の重要性を学びました。
技術カンファレンスにおけるブース戦略とは?
ブース戦略としては以下の要素があると考えており、このフォーマットに沿って決めていきました。
何を目的に
誰に
何を
どうする
※実際には成果を測るためのKPIも設定していましたが、この記事では割愛しています。
補足として、ログラスには今期の「エンジニア組織・採用戦略」として以下2つが掲げられています。
差別化戦略:本質的な複雑性に立ち向かうプロダクト開発
集中戦略:事業戦略に基づいたEnabling & Platformの体制強化
カンファレンススポンサーやメディア発信などのブランディング活動もこの戦略に沿って行っており、ブース戦略もここに紐づけて考えていました。
上記の戦略に関しては、VPoEの伊藤が執筆した以下の2記事に詳細が書かれています。
ここからは、『開発生産性Conference 2024』『Platform Engineering Kaigi 2024』2つのカンファレンスにおいて、具体的にどのような戦略のもと、ブース企画、SNS拡散、ノベルティ・配布物などのコミュニケーション設計をしたのかを事例として紹介していきます。
開発生産性Conference 2024
ブース戦略
開発生産性をテーマにしたカンファレンスということもあり、組織・採用戦略のうちの「差別化戦略:本質的な複雑性に立ち向かうプロダクト開発」に紐づけ、「本質的な複雑性(顧客価値)に立ち向かうための、ログラスの開発生産性向上の取り組み」にフォーカスすることにしました。
そして、開発生産性に関心のあるエンジニア・EMに対して、ログラスの具体的な取り組み事例をブースやSNS上のコミュニケーションを通して知ってもらうことをゴールとしました。
まとめると、以下になります。
何を目的に:ログラスが本質的複雑性(顧客価値)に向き合うために、さまざまな開発生産性向上の取り組みをしているという認知を広めるために
誰に:開発生産性に関心のあるエンジニア・EMに
何を:ログラスが取り組んでいる開発生産性の具体的な事例を
どうする:ブースでの展示や会話、ノベルティ、SNSでの発信を通して知ってもらう
ブース企画
ブース企画は戦略に基づき、「ログラスの事例を知ってもらうにはどうしたらいいか」を軸に検討しました。
その結果、開発生産性を6つのカテゴリに分け、それぞれに該当するログラスの事例を貼り、かつ参加者にも関心のあるテーマを付箋に書いて貼ってもらうという企画にしました。
アンケートのタイトルは、組織戦略の「本質的な複雑性(顧客価値)に立ち向かうプロダクト開発」と、ログラスのTech Valueである「Update Normal」をかけて、「顧客価値に向き合うためにアップデートしたい開発生産性のテーマは?」としました。
ログラスの事例はロゴマークが入った青い付箋に書き、参加者付箋は黄色い付箋に書いてもらうことで同じボードに貼っても混在しないような工夫をしています。(想定以上に参加者の方に付箋を貼ってもらい、「Loglassの事例」の文字が見えなくなってしまったのはうれしい誤算であり反省点...!)
また、事例の詳細が書かれた記事が存在する場合は、事例の付箋に記事リンクのQRコードを貼り、ブースで気になった方がそこから詳細にすぐ飛べるような仕組みにしました。
参加型にしたことで多くの方の意見が集まり、ブースを通った方に「このボードの写真を撮ってもいいですか?」と言っていただくこともありました。
また、書いた付箋を貼ってもらう過程で自然とログラスの事例も目に触れるため、そこから事例に対して質問をもらい、会話が弾むきっかけにもなっていました。
そういう意味でも、ログラスの事例+参加者の声という形にして良かったなと思っています。
SNS拡散
1. ノベルティプレゼント条件をX上でのアンケートボードの写真投稿にする
ノベルティとして技術同人誌とキーキャップを用意していましたが、そのプレゼント条件を「アンケートボードの写真を添えたXへの投稿」としました。
これにより、ログラスの取り組み事例が載ったボードを見ることでブースに来ていない方にも間接的に知ってもらうことを目的にしました。
結果として当日100人近い方にボード写真をXに投稿していただき、来場されていない方の目に触れることもできたのではないかと思っています。
2. カンファレンス中の記事発信
カンファレンス中はX上でカンファレンスのハッシュタグを追っている方が多くいるため、ハッシュタグをつけた形でログラスの取り組み事例の記事を発信しました。
その結果、投稿した記事にX上でポジティブなコメントをいただくこともできました。
ノベルティ
今回のカンファレンスに合わせ、ログラス初の技術同人誌をノベルティとして制作しました。(制作の裏側はこちら)
この技術同人誌は、テックブログ の記事をいくつかのカテゴリごとに抜粋して編集しており、この中に「技術的投資」「アジャイル開発」「チームビルディング」など、開発生産性と深く関わるテーマの記事が収められています。
この技術同人誌をノベルティとしてお配りすることで、ログラスの開発生産性の取り組み事例がより深く伝わるという設計にしました。
開発生産性Conferenceのまとめ
戦略とコミュニケーション設計をまとめると以下になります。
開発生産性Conferenceは、当初戦略を決めていなかったがゆえに途中で方向性が二転三転し、関わるメンバーには申し訳ないことをしてしまったという思いがありますが、途中で戦略をしっかり定めて仕切り直した後は、いろいろな物事がスムーズに決まるようになりました。
特に戦略を反映したアンケートボードを軸にしたコミュニケーション設計によって、目的を一定程度果たせたのではと思っています。
当日のブースの様子やSNSでの反響はカンファレンスレポートにまとめているので、ぜひご覧ください。
Platform Engineering Kaigi 2024
ブース戦略
Platform Engineeringをテーマにしたカンファレンスということもあり、組織・採用戦略のうちの「集中戦略:事業戦略に基づいたEnabling & Platformの体制強化」にフォーカスすることをまず決めました。
そのうえで、「誰に」は想定参加者層も踏まえて「Enabling & Platform領域に関心があるSRE、クラウド基盤エンジニア、Webアプリケーションエンジニア」としました。
そしてカンファレンスの少し前のタイミングで上記の組織戦略の記事が公開されたことから、記事を広めることでログラスの「偶有的複雑性と向き合うためのEnabling & Platform戦略」についての認知を広めることをゴールとしました。
まとめると、以下になります。
何を目的に:ログラスの「偶有的複雑性と向き合うためのEnabling & Platform戦略」についての認知を広めることを目的に
誰に:Enabling & Platform領域に関心があるSRE、クラウド基盤エンジニア、Webアプリケーションエンジニアに
何を:VPoE執筆の「ログラスのEnabling & Platform戦略」の記事の内容を
どうする:ブースでの会話や記事の閲覧を通して知ってもらう
ブース企画
ブース企画は戦略に基づいて、「ログラスのEnabling & Platform戦略」の記事の内容からテーマを抜粋したトークボードを用意しました。
当日ブースにはVPoEやSREなどのエンジニアメンバーが参加予定だったので、関心を持っていただいた方に直接、記事の内容をお伝えするきっかけにする意図がありました。
実際にトークテーマに沿って質問をしてくださった方に口頭でお話しすることができ、詳細は後述しますが、配布物であった記事カードや技術同人誌への導線にもなりました。
SNS拡散
1.事前の記事仕込み
「偶有的複雑性と向き合うためのEnabling & Platform戦略」に関する記事はVPoEの伊藤が書いたものがすでに存在していましたが、その続編としてエンジニアの龍島が「Enabling & Platform戦略の現在地とこれから」に関する記事をカンファレンス直前に公開してくれました。
これによって上段の戦略の記事と、具体の現在地とこれからについての記事が揃い、よりログラスの現状と未来について伝えるための武器となりました。
2.ノベルティプレゼント条件を記事のリポストにする
開発生産性Conference同様にノベルティとして技術同人誌とキーキャップを用意していましたが、そのプレゼント条件を「公式Xアカウントのフォロー&記事紹介投稿のリポスト」としました。
これにより当日70名近い方にリポストしていただき、多くの方に記事を届けることができました。
3.カンファレンス中の記事発信
さらに拡散をブーストさせるために、カンファレンスのハッシュタグつきで公式Xアカウントからの記事紹介の投稿も実施しました。
配布物・ノベルティ
1. 記事の紹介カード
今回の戦略として広めたい記事を読んでもらうために、記事のQRコードを印刷したカードを用意し、ブースに来てくださった方にお配りしました。
また、トークボードのテーマをこの記事の内容にしていたこともあり、トークボードで興味を持ってくださった方に「詳細はこの記事に書いてあります」とスムーズに紹介する役割も果たしてくれました。
2. 技術同人誌
もともと開発生産性Conferenceに焦点を当てて制作した技術同人誌でしたが、この中にトークボードに記載していた「心穏やかにDBバージョンアップした方法とは?」の元記事が掲載されていたため、トークボードでこの事例に関心を持っていただいた方に、技術同人誌の該当記事を見せながらお話しをしました。
これは狙って用意したものではなかったのですが、トークボードのテーマと技術同人誌の記事の内容をリンクさせることがコミュニケーション上スムーズであるという学びを得られたので、今後のカンファレンスでも継続したいと考えています。
Platform Engineering Kaigiのまとめ
戦略とコミュニケーション設計をまとめると以下になります。
開発生産性Conferenceでの反省を踏まえ、最初からしっかりと戦略を決めて各種コミュニケーション設計を練ったため、余計な手戻りがなくスムーズに進めることができたと感じています。
「ログラスのEnabling & Platform戦略の記事を全力で拡散する!」と意気込んで臨んだカンファレンスでしたが、その目標は一定程度叶えられたのではと思っています。
当日のブースの様子やSNSでの反響はカンファレンスレポートにまとめているので、ぜひご覧ください。
おまけ
2つのカンファレンスを通して学んだ、戦略的コミュニケーションの成果を最大化するためのオススメTipsをおまけとして紹介します。
それは、「カンファレンスレポートはカンファレンス中に仕上げること」です。
理由としては以下です。
カンファレンス中にレポートを書くことで、不足している写真などの素材にその場で気づき、集めることができる
X上でカンファレンスハッシュタグを見ている人が多いタイミングで公開することで、より多くの人にレポートを見てもらうことができる
私もカンファレンスレポートは当然のように後日書くものだと思っており、実際に1つ目のカンファレンスレポートを後日書いたところ、「あの写真撮っておけば良かった...!」と後悔した部分が多くありました。
そのため2つ目のカンファレンスではブース対応の合間を見てレポートを書くことで、「ここに載せる写真が足りないから今撮ろう」と、必要な素材をスムーズに集めることができました。
社内レビューを挟んでも、カンファレンス翌々日の朝には公開することができ、参加者の関心がHOTなうちに読んでもらうことができたのではと思います。
レポートのフォーマットを事前に決めておき、あとは当日の写真やブース・SNSでの反響を追加すればOKという状態にしておけると楽です。ぜひ試してみてください!
さいごに
ここまで2つのカンファレンスでの具体例を通して、技術カンファレンスでの戦略的ブースコミュニケーション設計について紹介してきました。
どちらのカンファレンスも事前に決めていたKPIを達成し、盛況のうちに終えることができましたが、ブース装飾やモニターの活用、トークの磨き込み、SNS上での盛り上げなど、まだまだ伸び代もたくさんあります。
これからも他社さんのブースや発信から学びつつ、今後のブース出展ではさらにUpdateした戦略的ブースコミュニケーション設計を目指せればと思っています。
そしてログラスでは、技術カンファレンスのスポンサーを含めたProduct Team Brandingや採用活動を一緒に取り組んでくれるProductHRを募集中です!
まずは情報交換ベースでも構いませんので、少しでも興味を持っていただけた方はお気軽にX(@tomoka_nagai)までDMお待ちしています✉️