真樹

はじめて長編を書いています 細々 事実とは限りません

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鮪は夢をみる

どうしてこんなことになってしまったんだろうか。泳ぎながら考えている。いつからこうなってしまったんだろうか。考える。どこから先が私のせいでどこから先が他人のせいなのか。何かに影響されているのか、これが私の本質なのかもわからない。きみが悪い。人のせいにできたら楽なものである。ひれを動かさないと。手足を動かさないと。止まってしまいそうになるから。 鮪は愛を知っている。愛されているからだ。親にも友達にも恋人にも愛されてきた。体温と水はだいたいおんなじ温度。母を失えどその愛が廃れたこ

    • 朝の星に

      いつの間にか秋に置いて行かれていたらしいということを、素足に伝わる冷気から知った。無駄に早く起きてしまった朝の徒然、メールボックスを確認すると、広告に埋もれた1件の通知が入っていた。私の愛する人が、どうやら小説を出したらしい。ざっとスクロールしてみる。普段のものよりもだいぶ長いようだ。 愛する人というのは恋人やその類ではないことをまずここで断ろう。彼女は時々このように文章を編んでは世に出し、私はそれを読む。だから寧ろファンと言った方が良いのかもしれないが、1ファンです。言葉

      ¥300
      • 今夜、一と殷盛り

        私が思うに、お盆は一年で一番、時間がゆっくり流れるときなのです 時間がぐうっとのびをして、此岸と彼岸の逢瀬に、ふっと目を瞑ってくれるのです だから、夏至よりも長く感じるのです 私が思うに、貴方は今日もどこかで生きていて、今はお布団の中で羊の夢を見ています 貴方自身の体温にあたためられて 私が思うに、私が生きるということは、貴方を追いかけるということです 私が思うに、貴方が生きるということは、生の豊かさを知るということです 私が思うに、生きているということは、貴方と私の

        • グッド・モーニング

          グッドモーニング。 おはよう、世界。寝ていないから、厳密に言えば感覚は違うんだけれど。 何かしらしたり、何もできなかったり___どんな過ごし方をしていたとしても____朝は訪れる。いつのまにか、視界の端の窓からコバルトブルーの空が見えるようになっている。この色が私に与えるのは、昔は絶望だった。さらにその昔は、大人の時間を跨いだ、タブーを冒したことへの高揚だった。am4:30の時計にときめかなくなった時点で死んだようなもの。高校時代はそう思って鬱々としていたけれど、最近はそ

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        鮪は夢をみる

          灰皿

          好きだった人がいたのです。恋人ではありません。身体を重ねたこともありません。しかしそこそこ仲が良くて、異性で、それなりに愛を囁くこともありましたし、時には嫉妬だってしました。殴るように感情をぶつけた夜もありました。いちおう、わたしは彼についてそれなりに知っているという自負がありましたし、それは彼もまたそうでした。とは言ってもわたしたちの仲など2、3年のものでしたが。好きな作家にちなんで、彼をKくんとでも呼びましょう。わたしたちにとって、実際にどれほど理解しているかなどどうでも

          夏浅し

          日本の暦というのは、現在の私たちから見るとややずれを感じるものである。どうやら昨日が夏至だったらしいのだ。 クリスマスやお正月に比べれば、決してインパクトのある日ではない。存在は知っていても日付まで覚えていない、という人も多いだろう。 しかし、随分前に解散したあるバンドが毎年夏至____6月21日に同じ曲を投稿するものだから、私たちファンは毎年この日に集合がかかっている。少なくとも私たちにとっては特別な日である。今年も夏至、迎えられたね、よかったね、一年早いね、なんて賑わう

          水分補給

          この世の中に一つのものを善悪で片付けられることなんぞ、あるのだろうか。メリーバッドエンドという言葉すら生まれている始末だ。そもそも全てに善悪があったとて、それを人間が判断すること自体が傲慢なような気もする。 私に言わせれば自殺も、その根源にあるであろう希死念慮も、善悪などつけられない。 まず、死んだ、生きながらえた、どちらが悪であろう。根源にある事象も、相対的には悪とは限らない。それを紛らわせてくれている救いも、さらに言えば、死にたいという気持ちすらも。 あまり賢くない私

          水分補給

          無作為に

          「神のみぞ操れるものがランダムってより、むしろ人間が、人間の手の中に収められなかったものをランダムと名付けたのかもしれないね」 考えるよりも先に喉仏を超えた言葉に、自分でもうわ、と思った。 神のみぞ操れるもの。神。 神を崇めた時代も、神を批判した時代も、あったでしょう。神に生かされた人も、殺された人もいたのでしょう。 自分の起床もままならない私が、深夜、何百年も前の王様と神様との抗争の文字をなぞる、なぞる。 きっとこの時代の人たちにとって、「ランダム」の範囲は広かったのだと

          無作為に

          仮名文字

          男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。 知己もすなる物書きといふものを、我もしてみむとてするなり。 見様見真似で、書いてみようと思う。 拙劣な文章を出すことは恥とされるかもしれないが、何事に於いてもアウトプットが肝心である。少なくとも師はそう言っていた。 私はまだ生きて20年にも満たないが、すでに夢を叶えている人、というのはいるらしい。 私はピアノを練習して、ピアニストになることができる人間ではなかった。水泳選手を目指して、水泳を習っていたわけではなかった

          仮名文字