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行動・環境・内面に働きかける「自己調整学習(Self-Regulated Learning)」
自己調整学習は"Self-Regulated Learning"という訳語がつけられる。自分をいかにうまく「調整」していくかというプロセスは、そのものが「学習」の本質である。
Zimmerman(1989)の研究では、社会的な要素を考えた上での自己調整学習が提案されている。
Zimmerman, B. J. (1989). A social cognitive view of self-regulated academic learning. Journal of Educational Psychology, 81, 329–339.
様々な要因が関わる自己調整学習
Zimmerman(1989)の研究では、あたらしい知識やスキルを獲得するためには三つ巴の関係を考える必要があると述べられている。その3つとは、
・Personal(個人)
・Behavioral(行動)
・Environmental(環境)
の3つだ。論文中で描かれている図は下記のとおりである。
行動による自己調整
行動を起こすことで、フィードバックを得てそれを「修正する」というサイバネティックなプロセスである。「サイバネティクス」の最もわかりやすい例は「エアコン(エアーコンディショナー)」
エアコンは、「設定温度」を目指して、暖かい空気や冷たい空気を出していく機会だ。
例えば、設定温度より高くなったら冷たい空気を出し、逆に設定温度より低くなったら暖かい空気をだす。
つまり、目的の温度に向けて調整を行っていくということがサイバネティクスなのだ。
自分が意図して「行動」してみるとき、コップ一つを取るときでさえ、この「サイバネティクス」は働く。
行動による自己調整は、自分の行動を変化させるところから始まる。
毎日漢字を書くことを習慣づけるように続けたり、学びのときに「誰かの話を聞く」ことを意識づけて行動に移したり、自ら行動を変え自己調整を行うことだ。
環境による自己調整
次に、環境による自己調整。これは「行動」に移したものが、「環境」にどのような影響を与えたか「フィードバック」をもらうことだ。
例えば、自分のいる部屋を快適なものとするために、エアコンをつけたり、静かなところで学ぶようにしたり、外界に働きかけることで自己調整がうまくいくように変化を起こすことだ。
また、外界は部屋の設備にとどまらず、他者も個人にとっては「環境」にほかならない。他者とのやり取りの中で自分自身を調整させていく。
自分を取り巻く環境とやりとりすることで、自己調整を行うことができるのだ。
内面での自己調整
そして、最後に自らに対して自らを調整する方法がある。これは行動をするのではなく自分の内側の中だけのプロセスで完結する。
例えばスペイン語が母語の人は、自らが予め持っている「pan」の知識と、外国語である英語の「bread」という単語を結びつける、そんなプロセスは、外界から得た情報を自分の中に取り込み、調整するというプロセスが発動する。
全く知らなかったこと、発見したことは、自分の中の知識と比較して調整し、取り入れるのだ。
ピアジェの学習観
スイスの心理学者ジャン・ピアジェは生命が外界からの刺激を同化し、調整するプロセスを、人間の学習の仕組みへ類推した。
わたしたちが自己調整を行っていくということは、まさにこの「学習」を行うことにほかならない。そして、自分の行動、環境、内面の3つへの働きかけこそが重要なのだ。
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