私たちに芽生える素朴理論
今回は、私たちが日常生活を送っていく中で発見し、いつも作り上げている「素朴理論」について、考えてみる。
素朴理論をあぶり出す調査
まず、下の問題を、その先を見ずに考えて欲しい。
この写真のaの点、bの点、それぞれにどのような力がかかっているだろうか。
この問題、ハーバード大学の学生に出題され、下記のような回答が80%を超える結果になった。上昇しているときは上向きの力がかかり、下降している時には下向きの力がかかる、というモデルだ。
ただ、科学的に考えると、下のようになるはずである。物体が空中に浮いている時、物体に触れているものは何もない。細かい空気抵抗などを除けば、下向きの重力しかかからないはずである。
私たちは日常的にさまざまなことを目にし、吸収し、一般化して規則性を見つけている。こうした素朴な理論は、自らの経験と記憶によって裏打ちされているものでなかなか塗り替えにくい。
地球に対する素朴概念
例えば、地動説はその中でも歴史が証明している。
日頃太陽や月の運行を見ていれば、わたしたちは地球が動いているとは全く思わないだろう。
さらに、Vosniadou & Brewer(1992)の研究では、子どもたちを対象に地球はどんな形なのかをアンケートしたものがある。
結果は上記の通りで、球体の真ん中に平らな地平があるものや、パンケーキ型のもの、完全な正方形の平面のものまでさまざまな素朴理論がありうる。
ただ、地球が丸いと自分の目で確かめたことがある人は、宇宙飛行士くらいなことも事実で、他の人の全ては、人から聞いたものに他ならない。
目の前にはどこまでも平らな地平がある上に、平らなところではボールがどこかに転がっていったり、私たちが球体と感じる実感もなかなか持てないだろう。さらに、球体だという知識を使わなくても困らない人がほとんどだ。
しかし、最近Google Mapsが球体になったりして、面積が正確になり、北に住むほど都合の悪いことがあったものが解消されたりする。
私たちは直感と熟考と、その狭間の中に生きている。両方をうまく活用していくことは、私たちをさらなる冒険や発見へと導くのかもしれない。
ただ続けることを目的に、毎日更新しております。日々の実践、研究をわかりやすくお伝えできるよう努力します。