マガジンのカバー画像

孤独な研究者の夢想

65
認知科学研究・最近読んだ本・統計など研究に関係することを書きます。
運営しているクリエイター

#心理学

社会に埋め込まれた平均思考 【トッド・ローズ著 ハーバードの個性学入門 平均思考は捨てなさい】

小学校5年生の算数の単元では「平均」が出てくる。 例えば、東京ベーシックドリル5年生算数の問題を引用すると下記のようになる。 (問題は下記リンクより引用) ちなみに、それぞれの答えは、①が「22ページ」②が「30.8ページ」だ。 平均値、は何を現しているのだろう?上のデータをグラフにしてみるとこんな具合だ。 実際にそれぞれの平均値を出してみると、平均値に近いサンプルは、7つのサンプルのうち、1つずつしかない。 「平均値は集団全体の傾向を示している」と果たして言える

私たちはどのくらい知っているんだろう? 【G・ベイトソン著 精神の生態学ー知識の量を測ること】

娘「パパって、どのくらい知っているの?(HOW MUCH DO YOU KNOW?)」 娘との会話の記録をそのまま著書にのせる人類学者グレゴリー・ベイトソン。その対話の中に「知識」というものの本質があらわれてきます。 「一つの知識」が意味をなすには ベイトソンは 父「脳の重さが2ポンドだとすると、だいたい四分の一くらいで、半ポンドくらいかな」 と応える。つづけて、 父「そういえば友達のお父さんがね、お父さんの方が子どもよりたくさんのことを知っていると言っていたんだ。

自己調整(セルフ・レグ)とセルフ・コントロール信仰 『「落ち着きがない」の正体』

「メタ認知」といえば、『メタ認知的コントロール』、すなわち、自分がつぎにどのような行動を取るか、「判断」をすることが強調されがちである。 特に「落ち着きのある子」が「今後の学業成績が優秀であった」ことがわかったセンセーショナルな研究、「マシュマロ・テスト」が有名である。 マシュマロ・テスト 1963年にアメリカの心理学者ウォルター・ミシェルが行った実験がある、それは、子どもが人生で成功するための、自制心の重要性を解くときに必ず引用される。 4歳から6歳までの600人の子