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孤独な研究者の夢想

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認知科学研究・最近読んだ本・統計など研究に関係することを書きます。
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2019年5月の記事一覧

SFはなぜこんなにも面白いのだろう。

今までこのNoteではたくさんの本の紹介をしてきました。 さらに、「物語」の文法まで紹介したりしていて「さぞかし物語が好きで文学少年であったに違いない」と思われるかもしれません。 でも、本を深く読み始めたのは大学生になってから。高校生までは「テニス」に明け暮れる少年でした。 私はどちらかというと本は苦手で、図鑑好きだったのですが、なぜかこれはハマる!という本がありました。それは「十五少年漂流記」でした。 なぜこれが面白かったのか、それは今になって思うと「現実の条件下で

スクリーンタイムは、【管理】ではなく【振り返り】に。

大人も子どももデジタルデバイス中毒 近年「スマホ育児」なるものがバズワードになるほど、子どもとテクノロジーの距離はぐっと縮まっているとともに、大人も子どももデジタルデバイス中毒になってしまっているのではないでしょうか。 かくいう私も電車内ではKindleアプリを使ってマンガや書籍を読んでいて、あながち他人事とはいえません。 東京コミュニティスクールでのデジタルデバイス そして、東京コミュニティスクールでは、1年生〜4年生まで、一人一台のiPadを活用しています。 子ど

ストーリーのストーリー

ストーリーをつくる、ということ。当然のことながら、アニメーションをつくることストーリーをつくることであるし、例えばゲームを作ることもストーリーをつくることであったりする。 古今東西、ストーリーの型にはいろいろなものがあるが、特に日本で有名なものは「起承転結」であろう。 起承転結で語る 起承転結。世の中のストーリーを生じる作品は大体これでできているといってしまっても過言ではないほど、起承転結から世の中の物語はできている。 一番身近に触れられる起承転結は、「4コマ漫画」だ。

最近読んだマンガ

マンガを読む、となるともっぱら最近はKindleで読んでいます。 もともとあまりマンガを読む方ではなかったのですが、周囲にマンガに詳しい方がいらっしゃったり、おすすめのマンガを教えてくれたり。あとは、いつも立ち寄る本屋の文庫エリアに置かれている、講談社まんが学術文庫を手にとってみたりと、マンガを読む機会が増えました。 そんな中で最近(?)といってもここ2年位で読んだマンガを何作かご紹介したいと思います。 (ちなみに、下記のリンクはすべてアソシエイトリンクにしているので、

外発的動機づけは悪者なのか? 【速水敏彦著 『教育心理学の神話を問い直す 内発的動機づけと自律的動機づけ』】

以前ご紹介した「自律」と「内発」について研究したデシ教授の本。 二回シリーズで「人を伸ばす力 ー内発と自律のすすめー」の紹介をしました。今回は、最近出版された下記の本、速水敏彦著『教育心理学の神話を問い直す 内発的動機づけと自律的動機づけ』の中で紹介されていた、「外発的動機づけのグラデーション」のお話を紹介します。 内発的動機づけと外発的動機づけ人の動機づけ理論として最も有名な著書は、波多野誼余夫先生の『知的好奇心』でしょう。 「人は怠け者じゃない」というそれまでの管理

自分のことば、相手に届いていますか? 【竹内敏晴著 教師のためのからだとことば考】

職業病だからなのか、誰かと話をしたり、関わりを持つときには、自分のことばが相手に届いているか、ということに神経を配ってしまいます。 自分が発した声が物理的には相手に届いているとしても、相手に自分の「ことば」が届いているかは相手の反応を見たりしながらチューニングを合わせて調整していき、なかなかこれがまた難しく、試行錯誤をし続けていくしかありません。 竹内敏晴さんの「話しかけ」のレッスン 私の大ヒーローである、竹内敏晴さんの本を開くたびに、声の出し方というテクニカルなところで

所変われば興味も変わる。

TCSには月に一度、教員が企画をして子どもを巻き込み、面白いことをしよう!というBig Wednesdayなる企画があります。 (映画のタイトルらしいですが見たことはありません。) 今月はあまりにも渋すぎて人が集まるかどうか。。。とは思っていたものの、やはり行きたいところに巻き込みたい!ということで 題して「弘法大師の秘宝三昧」ということで、今、東京国立博物館で開催されている特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」に行ったときに考えたことを書こうと思います。 実は「空海」

(ときには)過ぎたるはなお及ばざるがごとし(2) 『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』ゲルト・ギーゲレンツァー著

5/15の記事では、情報が少ないほうがより意思決定も上手くいく5つの場合のうち、始めの2つを紹介した。 「ヒューリスティックス(Heuristics)」の働き5パターン 1.役に立つ程度の無知 再認ヒューリスティックが良い例だが、直感はかなりの量の知識と情報を凌ぐ働きをする。 2.無意識の運動スキル 熟達したエキスパートの直感は無意識のスキルに基づいているため、考えすぎるとスキルを発揮できなくなることがある。 3.認知限界 私たちの脳は、忘れたり、小さく始めたりといっ

(ときには)過ぎたるはなお及ばざるがごとし(1) 『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』ゲルト・ギーゲレンツァー著

『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』ゲルト・ギーゲレンツァー著 直感のほうがうまくいく時はどんな時なのか、そのときに私達が判断する「経験則」とは何なのか、ということに切り込む書だった。 まずは「直感」「直観」「勘」の違いを明確にしたところで、 それぞれの違いがあることがわかったものの、この本のタイトル「直感のほうが上手くいく」ときは、どんな場合なのだろうか、という疑問が頭に浮かんでくる。 著者は、この本の第二章「(ときには)少ないに越したことはない」で、下の5つのパタ

機械学習とプログラミングの違いから見えてくるもの (Medium記事紹介)

Mediumには良い記事がゴロゴロ転がっています。今回はたまたまきょう目についた良記事、Machine Learning vs Traditional Programmingの記事をご紹介します。 日本では実は「機械学習」という言葉はあまり耳にしないかもしれません。特に「人工知能(AI)」という方が、巷ではよく耳にするのではないでしょうか。 Wikipediaによると、「機械学習」は、 機械学習(、英: machine learning)とは、人間が持つ学習にあたる仕組

直感(Gut Feelings)ってどんなもの? 『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』ゲルト・ギーゲレンツァー著

今回は、今までの行動経済学のシステム1、システム2の話があった中で、「システム1に支配されてはうまくいかない」という話が主なトピックでした。しかし、必ずしも「システム2」を使えばうまくいく、というわけでもないことがわかっています。今回から、そんな「直感」の役割にフォーカスした、ゲルト・ギーゲレンツァー著 小松淳子訳『なぜ直感のほうが上手くいくのか? ー「無意識の知性」が決めている』をご紹介します。 直感とそれに似たことば 「直感」と似たことば、「直観」と「勘」は実際にそれぞ

「最悪の事態」を考えれば、正確に計画を立てられるのか?(3) ー計画錯誤と悲観的シナリオー

前回までの記事では、ベストケースに基づいて課題の時間を見積もる「楽観バイアスがいかに強いかが実験の結果によって示された。 今回は、残す二つの実験、実験4と実験5を紹介する。 実験4実験3までは、「ベストケース」、「最悪のケース」、「現実的ケース」の3パターンのいずれかを考えさせる実験や、複数のシナリオを考えさせる実験を行い、楽観バイアスがいかに強いかを示してきた。 そして、「最悪のケース」が最も実作業時間に近かったことが示された。 しかし、今までの実験では常に「ベスト

「最悪の事態」を考えれば、正確に計画を立てられるのか?(2) ー計画錯誤と悲観的シナリオー

前回は、Newby‐Clark, I. R. et al. (2000)の研究のうち、 「ベストケース」「現実的なケース」「最悪のケース」を、それぞれ3群に分けた大学生に、大学の課題を完遂するまでの時間を見積もらせ、そのあと最終的に見積もらせ、実際に実行してみて見積もりとどの程度違うかを比較してみる実験1を紹介した。 今回は、「最悪のケース」といっているからこそ採用しないのではないか、という問に答えるために、アプローチを変えた実験2について考える。 実験2はこんな一文か

「最悪の事態」を考えれば、正確に計画を立てられるのか?(1) ー計画錯誤と悲観的シナリオー

人は自分がこれからしようと考えていること、例えば料理や仕事にかかる時間を見積もると、 必ずと行っていいほど「楽観バイアス」が働いて、無意識のうちに楽観的に見積もり、実際に掛かる時間は見積もった時間を超えてしまう、 「計画錯誤(Planning Fallacy)」という傾向について以前書きました。 様々な分野、折り紙からソフトウェア開発まで、時間の見積もりを研究していった結果どの分野にも共通して引き起こされるこの傾向は面白い結果を呼びました。 今回は、この「楽観バイアス