言葉にせずともわかるクライアントの変化。
先週末のコーチングトレーニング2日目のコーチングの振り返り。
今回のクライアントは、以前もコーチングを受けてくれた友人。
コーチングの概要は、今回のトレーニングで学んだ『クライアントに「今」の感情をとことん味わってもらう』と言うもの。
その先にどんな事が起きるかはコーチもクライアントもわからない。前進するのか後退するのか、留まるのか深まるのか。わからない。けれど向き合う、味わう。
クライアントの今回のお題は「最近強く怒りを感じたシーンのこと」(詳細は控えます)
本人としてはあまり思い出したくない記憶。
朗らかだった表情が強張り、目線が下を向き始める。けれど今回はその感情をすぐには飲み込まずに口の中に留めじっくり噛み続けてもらう。
僕にも一抹の不安はあった。「事柄ではなく感情に向き合ってくれるのか」「いきなり今の感情を味わって欲しいと言ったが伝わっているのか」
けれどコーチングを進める。
クライアントの口が開く。
「あの時はこうで、その後こんな風に…」
一生懸命にそのシーンを振り返り説明してくれる。けれど今回はその時の事ではなく、その事を思い出した時の『今の感情を見つめていこう』とクライアントの話を中断した。
正直怖かった。互いの関係性に悪影響がないか、なんで話させてくれないのかとストレスを与えないかなんて事が頭をよぎった。しかし
「なんか自分でも話しながら、感情から離れて行くのがわかったよ」
と。
本人はもうわかっていた。明確ではないかもしれないが、自分の感情と向き合うという事を体感覚的に分かり始めていた。
「すごい…」
クライアント自身の力で少しずつコーチングが進む。愛おしさすら感じた。
「ちゃんとここに居るから。ずっと居るからさ。だから一緒にもう一度感情に向き合っていこう」
普段では絶対友人に掛けることのない言葉が自然に出た。恥ずかしさは微塵もなかった。
ここから本当の二人でのコーチングが始まった気がする。
何回か説明に行ってしまっては2人で感情に向き合う方向へ戻るという事を繰り返しながら、クライアントが感情を味わって行く。
そろそろ時間だ。
「そろそろこのコーチングを終えて行くけど、〇〇は今の感覚をどうしたい?」
「埋めたい」
少し戸惑った。僕の頭のどこかでコーチングはクライアントを『前進させなくてはいけない』という思いがあったのだと思う。
けれど戸惑いはすぐ消えた。
うんうん、と頷いてクライアントの目を見ていた。ああ、本当にそうしたいのだなと強く伝わってきた。
「そうしよう、そうしよう」
そうして2人のコーチングは少し静かに終わった。
けれど感動した。コーチングが終わった後雑談を交えながらコーチングを振り返っている時に僕がこんな事を言った
「変化の大小や、お題の重たさ重要さ。感情の大小は関係ないと思ってるんだ。クライアントがどう思ったからだから。けどきっと何かしらの変化や気づきが起こっているんだと思うんだよね。」
そうすると友人は、しっかりと僕の目を見て頷いた。
きっと友人の中でも、自分の感情と向き合った事で何らかの変化が起きていたのだろう。
僕はそれ以上はコーチングについては何も聞かなかった。その頷きだけで満足だった。
人は自分で歩みを進められる。それをまずは僕(コーチ)の方から心から信じる事。
極端に言えば、僕に唯一できる事はそれだけなのかもしれない。
けれどその素晴らしさを教えてもらえたコーチングだった。
本当にありがとう。