なぜ、いま、VoC経営なのか。#9 第2章VoC活用シーン ⑥振り返り
Insight Tech CEO 伊藤です。不満買取センターを運営し、独自のデータ×独自のAIで「声が届く世の中を創る」ことを目指しています。
このnoteは連載「なぜ、いま、VoC経営なのか。」の第9回(#9)をお届けします。【#1~#8も是非ご覧ください】
#9は第2章の6回目(第2章としてのまとめ)です。
第2章ではVoCの具体的な【活用シーン】について5度に分けてお伝えしてきました。今回はそれらのエッセンスを「まとめ記事」的に振り返っていきたいと思います。
1.CS・NPSを高める鍵を具体的に理解する
【背景】
市場総量の拡大が見込みにくい中で、既存顧客のロイヤルティを高め、LTV(Life Time Value)の極大化を実現することは、マーケティング上、極めて重要な課題。
【対応】
何をすればユーザーは喜ぶのか、ユーザーは何を期待しているのか、について高い解像度で理解することで、個々の施策の精度だけでなく、経営方針にかかわる大きな意志決定の最適化にもつながると考えます。
「顧客の意見が記されたテキスト」というと分析・価値化がしにくいとして認識されてきました。しかし技術的に不可能と思われたことも、AIやデータアナリティクスの力で価値化できるようになったのです。
「VoC経営」というとなんだか大事(おおごと)で新しい取り組みが必要のようにお感じかもしれませんが、既に実施されているCS調査やNPS調査のアップデートから始めることが効果実感(成功体験)につながり、VoC経営に関わるさらなる取り組みを誘発すると考えます。
2.既存商品・サービス改善のヒントを得る
【背景】
市場拡大が見込みにくい今、マーケティングで重要になるのは「いかに市場シェアを維持・拡大するか」。シェアを維持・拡大する対応は二つです。
①新規の顧客を獲得し続けること、②既存の顧客の取引継続を促すことの2つ。では、①と②のいずれを優先することが賢い選択なのか。
いうまでも②既存の顧客の取引継続を促す、です。
【対応】
CRMのビッグデータを用いることで離反しそうな顧客を見つけることはできるかもしれません。でも、離反しそうな状態をどう回避するのでしょうか?
「この商品・サービスのここが気になるな、ここが分からないな」というユーザーの声にヒントがあると考えます。つまり、VoCの中に離反につながる課題が隠されていると思うのです。
ではどのようにVoCを活用するのか。答えはシンプルです。手元にある自社に寄せられたユーザーの声を俯瞰し、優先的な課題を炙り出すのです。
VoCのテキストの中から、スピーディにどんな意見が多いのか、その意見は強い不の感情なのか、離反への相関は強いのか、を即座に理解できれば、打ち手の優先順位付けが可能となります。
自社に寄せられた声だけでなく他社との比較が出来るようなVoCデータ(不満買取センターデータやSNSデータ)に基づく強み・弱み理解も有効です。
3.新商品・新規事業のアイデアを創発する
【背景】
「新規事業をやれって言われているけどうまくいかないんですよ」「提供価値の定義って言われても、何を価値とすればいいのか分かりません」。
このような「新規事業がうまくいかない」課題の背景にあるのは【アイデア・企画】を着想・立案することの難しさではと思っています。
私たちは生活者の声の中に【アイデアや企画のヒント】が隠れていると信じており、それを見つけ、そこから洞察することが「飽和」「多様」「高速」時代におけるアイデア創発のアプローチの1つになり得ると考えています。
【対応】
私たちInsight Techではこの可能性を多くの企業に届け、イノベーションを興して頂くべく、VoCのビッグデータのなかから「イノベーティブでいい感じのアイデア」につながる声をAIで発掘する挑戦をしています。
VoCのビッグデータの中から、レア(新奇性)を有し、且つ自社にとって有望なVoCが客観的にピックアップしようとする挑戦です。
このようなロジック・アプローチの有効性は実証されており日本マーケティング学会の論文で発表させて頂きました。
これにより、勘と経験だけでは気が付かないアイデア創発につながり、「新商品・新規事業がうまくいかない」といった”あるある”の悩みをブレークスルーできる可能性が高まるのではと考えます。
4.ユーザーとのコミュニケーションを深化させる
【背景】
これまではユーザーである顧客・生活者が直接接点を持つことは難しく、コールセンターに電話するなど、方法も限られていたと思います。
それが「ダイレクトに声を届ける」ことができるような時代になりました。企業からみても「ダイレクトにフィードバックする」ことができるように。
そのような背景で各社はユーザーと接点を持つことができるコミュニティをオンラインに立ち上げています。なぜこのような難しい取り組みに挑戦しているのでしょうか。単にユーザーと近くなりたい、ユーザーに商品のことを知ってほしいということではないと思います。
「ユーザーとの対話から新しい発想を生み、これまでにない価値を生み出したい」というのがユーザーコミュニティのゴールなのではないでしょうか。
マスを対象としたコミュニケーションだけでは多様化したライフコースや価値観をとらえきれない時代。個々の生活者との【向き合い】が結果としてスモールマスを捉え、新しい市場を育てていくことにつながると考えます。
【対応】
といっても、コミュニティにたくさんのユーザーからたくさんの声やアイデアが届いてしまうとすべてに答えることができないのが実情です。
アイデア募集に寄せられるアイデア、困りごとの声、特定のテーマを対象としたWEB座談会での発言ログ・・・。様々なVoCデータからどのように注目すべきN=1(エヌイチ)を抽出するかが課題となります。
私たちInsight Techではこのような課題をブレークスルーするためのAIソリューションとして「アイデアイ(ideAI)」をご提供しています。コミュニティに寄せられたVoCのビッグデータの中から、レア(新奇性)を有し、且つ自社にとって有望なVoCが客観的にピックアップが出来るのです。
もらった声を活かす。活かされた声がなぜ良かったかを説明する。そして商品やサービスといったカタチにしてフィードバックする。このことに強いコミットメントをもって取り組む企業が増えることを願ってやみません。
5.ユーザー対応・問い合わせ対応を最適化する
【背景】
生活者・ユーザーから見ると、コンタクトセンターでの会話やそこでの対応は「その企業が提供するサービスの一つ」であり、まさに直接的にCX(カスタマーエクスペリエンス)を提供する場になっています。
携帯キャリアのコンタクトセンターへの不満を述べた不満のうち、2割がその不満を契機に他社へ乗り換えたとしており、乗り換えを検討したとする不満と合わせると7割近くがスイッチングのきっかけとなっているのです。
【対応】
一方でコンタクトセンターのオペレータの負荷は極めて高いのも実情。デジタル技術を活用した3つの最適化DXが業務負荷を軽減し顧客対応の品質を高めると考えます。
◆最適化DX① 分類・仕分けの半自動化
音声認識技術と自然言語処理技術を掛け合わせることで会話の内容を自動的に記録し且つ内容に応じた分類軸を電話が終わったところでレコメンド。
◆最適化DX② 類似事案・FAQのアシスト
音声認識技術と自然言語処理技術を掛け合わせることで会話の内容に応じて参考となる過去事案をレコメンドしたり、内容に応じたFAQを自動提案。
◆最適化DX③ 要注意事案への早期アラート
会話の内容やユーザーの声色などを捉えてユーザーの感情や内容の緊急度を判定し、トラブルになりそうな事案を早期に特定する。
VoCデータ×AIによる最適化DXによって生まれたオペレーターの時間・余裕を本質的なユーザー対応に充てることでユーザー・企業のWIN-WINが生まれます。これこそが「VoC経営」の礎だと考えます。
まとめ
第2章でご紹介した5つの活用シーンのポイントを纏めてみましたが如何でしたでしょうか?
私たちInsight Techが日々挑戦しているテーマでもあり、すこし自社色が出てしまいましたが、一人でも多くのひとに「VoC経営ってすぐできそうだな」と感じて頂きたいという想いです。ご了承ください。
こうして振り返ってみると、「VoC経営」は「そりゃできればいいに決まっている」ことだけど「でも、どうやって一人ひとりのユーザー・生活者の声を理解し意志決定に繋げるのさ?」という点、いわばデータハンドリングの難しさが共通のボトルネックなのだと感じます。
そこに手段としてのデータアナリティクスやAIが活かされるのだと思います。特に自然言語処理技術により、ユーザー・生活者の声から本音を炙り出すことができるようになる変革が「VoC経営」のボトルネックを解消し得ます。
私たちInsight Techは「独自のデータ×AI」を活かし「VoC経営」の実現を通じて「声が届く世の中を創る」を実現し、生活・社会をより豊かにできればと切に願い行動しています。
次回からは第3章として、VoC経営の進め方について総括をしていきたいと思います。どうぞお付き合いください。
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(追伸)先日、PwCコンサルティングさんとの協業をリリースさせて頂きました。Insight Techは価値共創のハブとして、世の中の「不」の価値化を通じ「声が届く世の中を創る」の実現に向け歩を進めて参ります。