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リサイクルは、幸せにつながるの?薩摩会議を通じて出た問い。

もう先月の話になりますが、今年で3回目となる対話型カンファレンス・薩摩会議2024が鹿児島で開催されました。毎回「150年後の世界に、私たちは何を遺すのか」という壮大なテーマのもと、全国から数百人規模で人が集まる一大イベントです。
今回は初めての試みでフィールドワークが追加され、鹿児島県内の10地域でテーマごとに探求を深めるローカルセッションを実施。そのフィールドの1つとして大崎町も舞台となり、合作としてホストを務めさせて頂きました。

日頃から視察対応を行っていますが、今回は全国から特に熱量の高い人たちが30-40人集まる1日。テーマを決めてゲストを呼んで、セッションを行い、参加者に何を持ち帰ってもらう場にするのか。そこに大崎町として、自分たちの意図をどう組み込んでいくのか。メンバーと喧喧諤諤しながら、相当な準備をして臨みました。


大崎町はテーマパークではないからこそ

「大崎町に来て何を見て、感じて、持ち帰ってもらうのか?自分たちは薩摩会議を通じて、何を達成したいのか?」
このテーマ設定は仲間内で相当時間をかけて議論しました。自分たちが1番強く思っていたことは、「大崎町が消費されるだけの’’コンテンツ’’になってほしくない」ということ。他所から来て、大崎町のいいところだけを見て、大崎の町や人には何も残らないようなことにしないためにはどうすればいいのか?と話し合い、設計を進めました。

そしてもう1つ、「環境のことだけを切り取られないようにしよう」ということ。
これまで大崎町に来る人たちは環境の文脈での期待、特に資源循環の視点で見に来られる要素が大きかったと思います。町をあげてリサイクルに取り組んできた実績があるからこそではありますが、最近感じるのは"環境"だけを見に来る視察やツアーは本質的ではないということ。本当の意味での循環を考えたときに、大事なのは環境だけじゃないですよね。環境の話だけをして、地域社会やコミュニティなど関係する重要な部分にフォーカスされないことにアンバランスさを感じていました。

大崎町では2021年から『サーキュラーヴィレッジ・大崎町』というビジョンマップを掲げて活動してきましたが、今年は活動開始から3年が経過し、それが「どの程度地域住民の方々に受け入れられているのか、日々リサイクルに取り組む町の方々は実際何を考え、どうしていきたいと思っているのか。企業との連携だけではなく、町の方々とも一緒になってこれからのことに取り組もう」と、さまざまな方針も含めて協議している転換期でもあります。

町の人たちのリアルを置いた状態で、いいところ(リサイクルができているところ)だけを見せるのは違うし、「環境先進地を見に来ました!」という意気込みで外から来られるのも違和感を感じています。環境の話だけではなく、地域のこと、社会のことをそれぞれの立場からリアルな話を出せる場にしたいと考え、テーマ設定やゲストの調整、そして地域住民の方にも積極的に参加いただけるように苦心しました。

結果、環境の話ではなく社会の話ができた。

そんな想いで準備をして臨んだ当日は、かなりの大雨。
蒸し暑さもあり、倒れる人が出てるのではという心配もありましたが、みんなで雨の日プランもしっかり準備していたこともあり、無事に全行程を終えました。手前みそかもしれませんが、とてもいい1日になったのではと感じています。

有機工場での見学・体験の一コマ。

実際に分別を体験してもらうことや、リサイクルセンターの視察、ゲストとのトークセッションなど複数のコンテンツがありましたが、今回は大崎町で暮らしている地域の方々にも参加していただき、一緒になって話せたこと、さまざまな異なる立場からの意見を交わして考えを深められたことが何よりよかったと思います。

さまざまな問いや意見が出た中、大きなテーマとなった話題は、会場の参加者から投げかけられた「リサイクルは地域の人の幸せにつながっているのですか?」という問いでした。

リサイクルの取り組みは、個人・自治体でそれぞれですが、みなさんだったらどう考えますか?ぜひ少し考えてみてください。

この問いに対して、「みなさんはどうですか」と発言の機会が場にゆだねられた時、地域にお住まいの方々が何人も前に出て、賛成反対も含めて、本当に様々な率直な意見を出してくださいました。

大崎町で生まれ育った子どもは分別が当たり前になっているけれども、他地域に行くとその処理の違いに驚くと同時に「他地域の方が楽でいいね」という率直な気持ちを抱くということ。

他地域から越してきたという男性は、“正直分別はすごく手間だし面倒だと思っている。他の自治体と同じように、焼却したらいいのではと思う部分もある。”と打ち明けてくださいました。

きっと普段大崎町で生活している中ではなかなか大きな声で言えないだろうことを、この場に出してくださったこと、地域の方が、楽しそうに積極的に参加してくださった光景は感慨深いものがありました。

こういった展開になることを期待してたところもありました。その一方で、大崎町ではこれまで積み重ねてきた歴史があるからこそ、様々な意見があってもそれを言える場がなさすぎるのではないか?と感じさせられた時間でもありました。
確かに28品目に分別することは手間です。焼却処分がいいのかはさておき、住民が不便と感じることは変えていくべきだと思います。そうした中、システムを変えていけないと感じているところに、住民の閉塞感があるのではないでしょうか。みんながもっと「変えていく、良くしていく」ことに貢献できる、参加できる場があればいいのではないか、ということを自分も伝えさせていただきました。

薩摩会議という場を借りて町の皆さんもとてもニュートラルな形で話ができたことは、自分たちとしても見たかった景色であり、すごくよかったなと思った瞬間でした。薩摩会議の参加者だけでなく、地域の人たちにとってもいい場になったと思います。

限られた時間でしたが、異なる立場からさまざまな意見を聞き、考えを深められたと思います。
本当は1人ひとりじっくりお話を聞きたい…
こういった対話の場の大切さ、場の力を改めて感じました。

年寄りと若者の二項対立ではない

薩摩会議を経て、今の自分たちに足りないもの・次のテーマも見えてきました。
それは、権力や権威のようなものが目の前にあった時に、 どう適切な対話の場を開くのか?より良くしていくための適切なアプローチを、自分たちは学ばなければならないということです。

例えば大崎町のリサイクルの話だと、25年という歴史が厚みを増して、簡単には変えられないぐらいの強固なものになっていると感じています。 自分自身、最初に大崎のリサイクルシステムを見た時に、よそからやってきた人間が「もう少しこうした方がいいんじゃないですか?」と気軽に言えるようなレベルじゃない、そんな強さを感じました。
“みんなが一生懸命作ってきたものだから”既に伝統のようになっていて、それが逆に変えることのできない権威のようなものになっている。そんな側面があるのではないかと。

すごくいいリサイクルシステムなんですが、それがあまりにも強固なものになると、息苦しさに繋がったりもします。 町の人たちは、環境に対してどうでもいいという人はいないし、リサイクルの取り組み自体を否定する人はいません。ただ、その裏にある側面、分別の手間や日々の暮らしに与える影響は、時代も変わる中でずっとそのままでいいと思ってる人も少ないように思えます。でも、それを適切に話し合える場が圧倒的に少ない。 「より良くしていきたい」と思っているのに、そこに対して参画する手法が極端に少なくなってしまってることが1つの課題で、もったいない部分だと痛感しました。

薩摩会議の他のセッションの中で、「年長者の意見が強くて、この社会には閉塞感がある」「若い世代(20代、30代)にもっと意思決定を託していきたい」といった話も出ました。
大崎町のセッションでもそのことが話題に上がったのですが、その際ゲストの1人である井上英之さんから「この話は、単なる若者とお年寄りの二項対立で考えてしまうのはよくないよね」と示唆いただきました。

年代で区切った対立の話ではなく、先人が築き上げてきたものを尊重しながら、どう適切に次の時代に紡いでいくのかを改めて考えなければならないこと。
往々にして、“もうお年寄りはいいから、若者だけで進めよう”となってしまいがちですが、それでは本質的な課題解決にはならない。そうしたギャップがある状況において適切に対話とともに進めていくアプローチを、自分たちは本当に知らない。その手法を多くの人が学んできていない。という井上さんの言葉に本当にそのとおりだと気づかされました。

これは大崎町に限らず、どこの地域でも共通の課題だと思います。人口構成上、上の世代の方々が数も多いし実際に意思決定をしている。そこに対して、世代の対立ではなくどうやったら上手く接続していけるのか、そのために何をしなければならないのか?示唆に富んだ大崎セッションとなりました。


ちなみに、薩摩会議を牽引するSELF代表理事の野崎恭平さんから連絡があったのは今年の6月。3ヶ月で、3日間のイベントを設計し、名だたるゲストを呼び、10か所のローカルセッションを成立させようとするなんて、本当に狂気の沙汰としか思えませんでした!!!!

小さな田舎町に暮らしている方だったら想像にたやすいと思うのですが、一気に何十人もが訪れる機会はそうなく、大人数で見学できる、食事ができる、自由に使える空間などほとんどないわけで…なかなかにロジ周りの準備や工夫も大変なイベントで、最後の1週間は通常業務が止まりました(苦笑)

とはいえ、普段の業務の中だけではなかなか取り組めない、話し合えないこともあり、準備を通してメンバーとも濃密な時間を過ごせたと思います。雨の日プランも入念に準備してくれたり、地域の方にも1人ひとり丁寧に声をかけて募ってくれた合作メンバー、本当にありがとうございました。
何より、この機会を与えてくれたSELFの皆さま・ご協力/ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

そおリサイクルセンター視察時の一コマ。
休日対応いただいた各所のみなさま、本当にありがとうございました。

※今回の大崎セッションは企画から運営まで合作で担当しましたが、通常、大崎町の視察は一般社団法人大崎町SDGs推進協議会を窓口に対応を行っています。(視察に行きたい、関心が高まった!という方はぜひこちらからご連絡ください。)

大崎セッションの1日はこちらでも紹介しています。

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