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海外MBA入学審査官の働き方

海外MBA入学審査官って普段何してるの?どんな働き方してるの?

こういう点について、この仕事に就く前は、自分がMBAの旅に踏み出した後ですら、全くイメージが持てませんでした。

私の例が本当に海外MBA入学審査官の典型的な働き方かはさておき、働き方の実態について書いてみたいと思います。


そもそもの仕事内容

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MBAの入学審査官としては、簡単に言うと、IESE(イエセ)を受験してくれる人を増やす仕事とそこから合格者を選ぶ仕事、すなわちMBAの入口に関わる仕事をしています。

国としては、日本と韓国と中東9カ国(UAE、サウジアラビア、クウェート、レバノン、カタール、オマーン、イラン、エジプト、ヨルダン)を担当しています。

国籍に関わらず、そこから受験してくれる方(アプリカント)は、全て私が主担当となります。

MBAの入学審査に直結しない仕事として、それ以外にも色々しています。

まず、卒業後のキャリアを変えたい人に対しての在学中のキャリアサービスです。

つまりMBAの出口に関わる仕事も日本と韓国中心向けに担当しており、MBA採用企業を開拓してIESE MBA生の採用に興味を持ってもらったり、在校生にキャリアカウンセリングを提供したり、等です。

そして、QS, The MBA Tour, Access MBAといった外部のフェア会社とのIESEとしての折衝窓口主担当も務めており、フェアの形式やら日程やら価格などについて、あれこれ相談や交渉をしていたりもします。

加え、MiM(Master in Management)という、提供2期目が始まったばかりの、入学時点の職歴0-2年の方を対象としたプログラムの入学審査も担当しています。

但し、その時点の英語力や金銭面等の理由により日本と韓国にはそぐわない可能性が小さくないプログラムなので、主に中東向けです。

上司が本キャンパスのあるバルセロナにいる一方、自分は東京にいて、東京に同じ仕事をしている同僚はいないので、日々の仕事は誰にも観察されておらず、それなりに自律心が必要です。


新型コロナウィルス以前の働き方

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東京オフィスは六本木アカデミーヒルズのオフィススペース(共有スペース)にあるものの、毎日通う義務はありません。

したがって、印刷や面会など必要な用事がある時に必要に応じて赴いていたほか、年間の30-35%、パソコン片手に海外出張していました。

30歳を過ぎて時差と気候の変化にめっぽう弱くなってしまいました。

ですので、一昨年の11月にバルセロナ出張から一旦東京に帰還してその2日後から移動効率悪くテルアビブに出張した時とか、昨年11-12月に東京→台北→シンガポール→ソウル→東京→ニューヨーク→東京→シンガポール→東京→ソウル→バルセロナ→マドリード→バルセロナ→東京と移動した時とかは、割と大変でした 笑 

受験者を増やす仕事と合格者を選ぶ仕事が重なる10-2月くらいが、仕事のピークです。

テルアビブ、台北、シンガポール、ニューヨークは、私の担当地域外です。

同僚の代理で学校合同フェアに参加したり、選考の一環でグループディスカッションが現地で催されたり、多数の学校関係者を集めた国際会議に参加したり、公式な面接をその地域の出願者と接点がなく偏見のない私がしたりとか、そういった事情で出張していました。

この業界は大して儲からない産業構造なので、IESEの職員は通常ビジネスクラスでの出張は許されておらず、海外MBA取得者ならおそらく通常満喫しているはずのリア充感の強い海外出張とは異なります。

それでも、現地でIESE卒業生の友人・関係者と会ったり、街を散策したり、美味しいものを食べたり、ということで、自分の中で海外出張を勝手に福利厚生の一部とみなしていた感じです。

30代にもなって海外出張が好きというのはどうなんだというツッコミもあろうかと思いますが、20代から変わらず、好きなものは好きで仕方ありません。

ANAを始めとしたスターアライアンスでの出張が多かったです。

欧州方面は、ワンワールドよりスターアライアンスの方が周りやすい気がします。

ネット環境も整った自宅とビジネスラウンジで全ての仕事を予め片付け、機内で仕事をするのはなるべく避けて、仕事も対象に含めて思索にふけりつつも、映画や連続ドラマを見たりして休息に充てていました。

探偵少年のせいで(?)マリーナ・ベイ・サンズが破壊される映画とかを、意識低めに見ていました 笑

前職(日本政府出向時)では、1人での出張が多かったわけではなく、むしろ一番多い時は大臣出張で10人くらいの大所帯さえありましたが、俄然、海外出張は1人のスタイルが好きです。


新型コロナウィルス以後の働き方

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海外出張が完全になくなったので、リモートワーク自体は変わらないものの、生活が激変しました。

パフォーマンスが上がるのかどうかはさておき、全部オンラインでやろうと思えば、できるかできないかで言えばできるので、完全オンラインワークです。

面接を含む出願プロセスも全てオンラインになりました。今後どうなるかは今後の情勢次第です。

日本でのミーティング相手も、皆さんオンライン仕様なので、東京オフィスにも殆ど行かなくなりました。

キャリアサービスの分野で折衝する企業も外資系企業が大半なので、顔を見せに会社に訪問しろという圧力がかかることも全くありません。

自宅の部屋にアロマオイルや観葉植物を置いて心を整える工夫をしたり、Zoomのバックグラウンドをパソコンのスペックが低くても綺麗なものにする裏技を活用してバルセロナキャンパスにいる感を醸し出してみて、とあれこれ工夫しています。

新型コロナウィルスへの対応上などの理由でバルセロナとのやり取りが増えて、中東向けの仕事も膨張しました。

そのため、日本の朝の時間は外部とのミーティングは一切入れず仕事はさほどせず、日本時間で14:00-22:00くらいに外部・内部双方のミーティングを入れるようにして、夕飯は自宅でという生活が板につくようになりました。

例えば、本記事に公開前微修正を施している某本日は、以下の通り、若干キャリアサービス寄りな日です。

- 15:00-15:45 日本人MBA在校生Aのキャリア相談

- 16:00-16:45 レバノン人MBAアプリカントとのカジュアル面談

- 17:00-17:45 UAEの某MBA受験予備校との面談

- 19:00-19:20 日本人MBA在校生Bのキャリア相談

- 20:30-21:00 ペルー人MBA在校生のモックインタビュー

- 21:30-22:00 スペイン人MBA在校生のモックインタビュー

このような背景から平日夜の飲み会には事実上対応不可となったので、対面で東京にて誰かと会う時は、相手の都合が許せば平日昼をお願いすることが多くなりました。

また、4人以上で会う機会を作るのを避けることで、自分なりの感染対策としています。

毎日同じ場所で仕事をしているのが苦痛に感じる人間だと以前から思ってきて、その根本は変わらないのですが、それがオフィスか自宅かではそれなりに差を感じています。

自宅で、会議や面談の直前までゲームをしたりドラマを見たり(すいません 笑)が許される環境は、やはりオフィスに毎日通うよりも遥かに性に合います。

完全に活かすことが不可能な移動時間(片道1時間程度)を浮かすことができているのも大きいです。

けれど、次年度(7月~)の戦略策定なども目的に据えた入学審査チームのリトリートという形で最低年2回実現していたバルセロナ出張も今年の夏は消え、リトリートも全てオンラインでこなすことになりました。

色々な楽しい工夫を取り入れたオンラインリトリートになったものの、世界中に散らばった同僚たちと一同に介する機会を失い、今年度へのギアを入れ直すことは全く簡単ではありませんでした。

どうにかリフレッシュすべく、夏以降、日本の最北東(知床)から最南西(石垣)まで幅広く、パソコン片手の旅をしつつ、結果的にワーケーションを実現していました。

未返信メールが蓄積されていると気になって耐えられない性分で、どうしても休暇中でも返信してしまいます...

このように日本にいなくてはならない必然性はさほど高くない仕事です。

他方、新型コロナウィルスへの感染リスクや諸々のルールや風評云々を一旦完全に度外視するにしても、今は海外に無理やり飛び出して数ヶ月以上の単位でノマド的に暮らしつつ仕事するにも、行き先の情勢の変化が読みきれず日本よりも安定感を欠いているため楽しみきれないだろうということは予想がつきます。

具体的な行き先候補として漠然と妄想してきたのは、両国とも往訪済ではありますが、ジョージアやイタリアです。

特に、格安の物価と寛大なビザ制度が売りだったジョージアは、新型コロナウィルスの影響もあってか新設されるデジタルノマドビザのやや厳しい要件のため、今後の情勢が不透明です。

しかし、マルコ・ポーロが絵に書いたように美しいと讃えた首都トビリシの街の美しさ、軍用道路の先に広がるRPGの世界を彷彿とさせるコーカサスの大絶景、私が世界一美味と感じたジョージアワインは筆舌に尽くし難いものがあります。

私の担当国で日本と同じくらいの重みを持つUAEの首都ドバイにもトビリシからは、時差なし乗継なし3時間強のフライトで行けます。

新型コロナウィルスが一定程度収束したら、ジョージアに拠点を短期的にでも移せないかと妄想していたりします。

さすがに内部的に色々決裁を取る必要がありますが。

なので、一旦国内で様子を見つつ、うまくリフレッシュしながら、淡々とオンラインで仕事をしていこうかなと思っています。

虚しさは相当残りますが...

一方、こういうことを考えていくと、どこ(国や都市)で働くか、ではなく、誰と働き誰のために働くか、が仕事の性質を規定する、というのが、ニューノーマルな働き方になり、海外就職という概念は一部形骸化するのかなぁと思ったりもします。



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