なぜ僕が、ふくしま駅伝に魅せられているのか。②
「ふくしま駅伝なんてあるんだなぁ」
将来、妻になるかみさんを助手席に乗せ、福島市にある病院まで通院していた時。国道4号線バイパスの沿道に駅伝の開催を知らせる看板が立っていた。走ることを拒絶していた僕の日々にふとふくしま駅伝が入ってきた瞬間だった。
僕は順風満帆な競技生活を送った。大学に進学して箱根駅伝を走るんだろうと誰も疑わなかったし、本人が一番疑っていなかった。今思えば天狗になっていた。そんな気持ちで大学に入ったらインターハイに出たやつはゴロゴロいるし、西日本は高校や地域のレベルが高くて僕より速くてもインターハイに出ることができない選手はたくさんいた。そんなやつが隣にいるのだ。腐った。気持ち良く鼻をへし折られたのだ。その時身につけた自己肯定感を下げない方法。「俺だって本気出せば負けないんだよ」絵に描いたアホである。
走ることから距離を置き、お酒が大好きだった僕は結婚をして一気に体重が増えた。70kg目前まで増えた時には、3日間で5人に「あれ、太った?」と言われた。さすがにそれにはこたえた。痩せなきゃヤバいと思った僕は、まず筋トレから始めたーーーとにかく走ることが嫌だったーーー筋肉ではどうしても誤魔化すことはできず、結局走らざるを得なくなってしまった。ちょっとずつ走れるよになり体重も落ち始めた矢先、例の看板が目に飛び込んできたのだ。そしてまた始まってしまったのだ。
「俺だって本気出せばふくしま駅伝くらい走れるわ。」
〈つづく〉
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