【イベントレポート】HiVEの日 SEP. 2021 | CHALLENGE FROM 32 YEARS OLD | 32歳からの挑戦!
■Speakers | スピーカー
松岡智子(Artist)
太田奈々海(Sports Analyst)
金沢慧(HiVE)
■Abstract | セッション概要
毎月8日はHiVEの日。様々なカルチャーに焦点を当て、公開雑談を行います。
「32歳会社員から芸術家へ」
HiVEにも度々登場しているアーティスト・松岡智子さん。10月に初の海外展示を控え、現在クラウドファンディングで活動費用の支援を募っています。
松岡さんがアーティストとして活動するきっかけとなった絵があります。それは、スポーツアナリストの太田奈々海さんをイメージして描いたもの。この1枚をきっかけに、HiVEでのライブペインティング、ZOOM背景画など、活躍の場を広げていくこととなりました。
9月のHiVEの日では、松岡さんが太田さんとの対談を通してアーティスト活動の原点を振り返り、未来を語ります。
1.太田さんの抽象画を描くことになったきっかけ
◆金メダルをとることを予知していた!?
金沢さん:こちらの絵は、2019年の12月に、太田さんをイメージして描かれたんですよね。
松岡さん:はい。金沢さんに「絵を仕事にしたい」って話をしたら、「人物は描けるの?」と言われて。共通の友人である太田 奈々海さんを描く話が上がりました。
太田さんとはオリンピックに向けたスポーツのイベントで知り合って仲良くなったんですよ。
太田さん:そうなんです。オリンピックへの熱い想いを話したので、その印象が強かったのかな(笑)
松岡さん:印象的でしたよ!シビアな世界で戦う選手たちを真摯にサポートしているのを知って、すごく刺激を受けましたね。
金沢さん:絵はどのように描かれたんですか?
松岡さん:当時まだ画材も持ってなかったので、金沢さんと話したその日に渋谷に行って、キャンバスや絵具を購入しました。
金の丸が描きたい!と強いイメージが頭に浮かんだのですが、手だときれいに描けなくて。フライパンの底に絵の具を塗ってぺたっと貼り付けました(笑)
赤は、太田さんの情熱が燃え盛っているイメージ。太田さんと話した時に感じた熱量をキャンバスにそのままのせました。
色が混ざって汚くなるのは太田さんの凛としたイメージにそぐわなかったので、あくまで独立したそれぞれの色が映えるよう、一度乾かしてから銀色をのせました。
金沢さん:太田さんは絵をみてどんな印象をもちましたか?
太田さん:真っ黒な背景に強く色が飛び散ってて、「私こんな激しいイメージなんだ!」とびっくりしました(笑)
ちょうどその頃東京オリンピックの選考会があって、プレッシャーが大きい時期でした。そういった中で「気持ちを強く持たないと」と張りつめていたのもあったかもしれません。
スポーツアナリストとして活躍している方は日本にあまりいなくて。葛藤もありながら必死にやっていました。コロナ禍も重なって予期せぬトラブルも多かったですしね。
だからこそ今回、サポートした日本チームがフェンシング団体で金メダルを獲得できた喜びは大きかったです。
金沢さん:描いた2019年の時点で、金メダルをとる未来が見えていたのかと思うような絵で、すごいですよね。
太田さん:はい。予知してくれてたのかな?という感じで嬉しいです。
今、松岡さんの書いてくれた絵を改めてみると、当時の気持ちも思い出されて。
「色々苦しいこともあったけど、この胸が震えるほど嬉しい瞬間に全てつながっていたんだ」と感じて、とても感慨深いですね。
松岡さん:私もこの太田さんの絵を描いたのをきっかけに、イベントに呼んでもらってライブペイントができたので。アーティスト活動の原点になった、すごく思い出深い作品です。
2.アーティスト松岡さん フランスでの活動予定について
◆絵を通して、言語を超えたコミュニケーションがしたい
金沢さん:松岡さんはクラウドファンディングで見事目標金額を達成されて、今年の10月にはフランスに渡航されますよね。現地ではどういった活動を行う予定なんですか?
松岡さん:フランスでは、ルーヴル美術館で絵を展示するほか、エッフェル塔の前でライブペイントをする予定です。
エッフェル塔自体を描くのも面白そうだし……現地に行って初めて感じるものもあると思うので、モチーフはその時に決めたいですね。
ピアニストやアーティスト仲間ともコラボして、皆の力を借りて最高のイベントにできたらと考えています。
描けるかなあという不安はありますが、まず何より「エッフェル塔の前で描いたら楽しそう!!」と思った自分の直感を大事にして、楽しんで描きたいですね。
あとは、現地の人も描けたら面白いかも。絵は言語を超えて、深く交流できる一つのツールだと思っていて。どんな方と出会えるのかすごくワクワクしますね。
太田さん:松岡さんのお話を聞いていると、私までワクワクしちゃいます。
私もコロナ前に遠征でパリに行ったことがあって、ルーヴル美術館の雰囲気も知っているので。あの歴史ある地に松岡さんの絵が展示されるのか、と思うと感慨深いですね。
ライブペイントも、現地の方の反応がすごく気になります。
フランスのエッフェル塔の前で描くっていうのは、東京タワーの前で描くのとはわけが違うと思ってて。
芸術の国フランスの方々に、松岡さんのパフォーマンスがどんな風に伝わるのか。
皆の感情がゆさぶられる瞬間をぜひ生で感じたいので、私もフランスに行こうかなと計画中です(笑)
◆「自分から壁を作っていた」と気付いたフランスでの思い出
金沢さん:松岡さんはなんでフランスに渡航しようと思ったんですか?
松岡さん:フランスは私にとって、価値観が大きく変化した思い出の場所なんです。
高校時代、修学旅行でフランスに行ったんですが、皆がグループで行動する中私はひとりポツンとしていて。クラスに馴染めなくて友達がいなかったんです。
シャンボール城に行く移動中のバスでも、誰も私の隣の席に座ってくれなくて……。
皆が楽しそうにおしゃべりしている中、泣いているのがバレないよう、3時間ずっと窓の外を見ていました。
ようやく夕暮れ時に、目的地のシャンボール城に着いて。
「帰りたいな」と思いながら、一人でぼんやり景色を眺めていたんですが、
その時目にした、渓谷に夕日が沈んでいく様が息を飲むほど綺麗で……!!
圧倒的な美しさを前にしたら、不思議と悲しさとか孤独とか、苦しかった気持ちがすーっと溶けていく感じがしました。
憑き物が落ちたように「私ってなんてちっぽけなことで悩んでいたんだろう」と思って。そこからクラスメイトに自分から話しかけられるようになったんです。
心がフラットになったんですよね。自分と他人、みたいに分けて考えて、勝手に孤独を感じてたけど……。
作っていた壁をなくせたら、クラスメイトも普通に話してくれて、写真撮ったりもできて。
あれ?なんか世界って意外と優しいな?みたいな(笑)
その時感じた「壁なんてない」という鮮烈な思いを追体験できたらと考えていたのですが、残念ながらシャンボール城でライブペイントは難しくて。
でも時間だけは、夕暮れ時に合わせて行うことにしました。
感じ方はもちろん人それぞれですが、イベントを通じて「人と人との分断なんてないんだ」という思いが少しでも伝わったら嬉しいなと思います。
金沢さん:松岡さんにとって、フランスは本当に思い出深い土地なんですね。今孤独を感じていたり、悩んでいる方にとっても響くものがあるんじゃないかなと思います。
今のお話を聞いて太田さんはどんな風に感じましたか?
太田さん:私も学生時代クラシックバレエに打ち込んでいたので、放課後に友達と遊んだりできなくて。あんまりクラスに馴染めなかったので、すごく共感する部分が多かったです。
松岡さんが、今は絵という表現手段を見つけて、思い出の地であるフランスで作品を出展するまでにいたって。
今回のライブペイントで、絵を通じて多くの人とコミュニケーションを深めようとしているのは、勇気をもらえました。
金沢さん:選んだ道は、松岡さんも太田さんもまったく違いますが、自分と向き合い一歩ずつチャレンジを続けて願いを叶えてきた、という部分では繋がるものがありますよね。
太田さん:はい。フィールドは違っても、一緒に人生を歩んでいる同志のような気がして感動しました。
3.二人のこれからの未来について
金沢さん:最後にお二人のこれからの展望について簡単に聞かせてください。
太田さん:スポーツアナリストの活動を通じて金メダルに貢献できたのは、私の人生の中で宝物だと思っています。
今は、その得がたい経験を糧に自分に何ができるのか模索中ですね。
松岡さんに描いていただいた絵は、本当にあの時点で金メダルがみえていたのかも!?と思うと嬉しいです。
また、この絵をみることで当時の記憶も鮮明によみがえるんですよね。
プレッシャーがあるなか頑張ったな、とか、たくさんの方に応援してもらって支えられたなとか。
そんな気持ちを思い出せるのは、ホントにパワーをもらえてありがたいです。
金沢さん:松岡さんはいかがですか?
松岡さん:太田さんの絵は、本当に未来を予知して描いちゃったみたいで我ながらすごいなと(笑)
偶然かもしれませんが、太田さんの中に確かにあった可能性を感じ取り、絵として表現できたと思うと嬉しいですね。
今はコロナで皆鬱屈した気持ちを抱えがちですが、本来はどんな人もいい色、面白い未来を秘めているはずです。そういった可能性を絵で表現していきたいですね。
太田さん:私の色も変わってるかもしれませんね。
松岡さん:確かに!また改めて描かせていただきたいです。
私、「何を描く画家なのか?」っていうのを決めなきゃと思って、ずっと考えていたんですけど。
今の時点でしっくり来るのは「意志」なのかな、と思っています。
太田さんの抽象画も、太田さんが生きてきた過程や、目標に向かって努力していた「意志」を強く感じて、表現しているんですよね。
カメラでスナップ写真をとるように、私はその方の「意志」を絵で切り取っているんだと思います。
金沢さん:どんどん変化していくのがまた面白いですよね。今後も「意志」という切り口で様々な方の絵を描いていかれるんですか。
松岡さん:そうですね。引き続きそれはやりつつ、ライブペイントも舞いの要素を取り入れたいと思います。音楽と合わせて表現することで更に幅が広がると思って。
あとは人だけでなく、モノ、自然なども「意志」という切り口でみたときにどんな絵になるのかやってみたいですね。
今回フランスで絵を描くことで、自分自身の意志にも変化がうまれると思うし、まだ予想できない未来が待ってると思うとワクワクします。
金沢さん:お二人のこれからがとっても楽しみですね。今日は本当にありがとうございました!