大下一真の第一歌集『存在』を読む
先ほどから、大下一真さんの歌集『存在』を読んでいる。
大下一真(おおしたいっしん)
1948年7月2日生れ (静岡県)
お父上は円覚寺派 城福寺の住職で、木俣修の歌誌「形成」の同人だった。
1971年に「まひる野」(窪田空穂主宰の歌誌)に入会。(23才)
1985年、鎌倉の瑞泉寺住職を拝命。(37才)
1988年 第一歌集『存在』刊。(40才)
同年、山崎方代の研究誌「方代研究」創刊にかかわり、以後編集を担当。
2022年 歌集『漆桶』で迢空賞受賞。
現在(24.3.1) 75才。
「存在」より
・水飲めば水さむざむと胃にいたる人を憎みてありし一日か
・竹林の淡きみどりの径を行き朽ちし墓標の一つに会いぬ
・酔うほどの思想は持たず僧形に若葉の朝の庭掃いている
・一本の竹が一生に受くる風の量など思えり夜を一人いて
・桜ばな花弁一ひら一ひらの輝きて降る喪服の肩に
・愛しみて保ちし肉体の八十年焼くに要せぬ一時間ほど
・人間の喜怒哀楽の究極を収めて白磁の壺の鎮もり
・右左口の山ふところのやさしきに方代さんを預けて帰る
これは、凄い歌人だ。