無敵のスーパーフード。
今日は、以前から楽しみにしていた幼稚園でのマラソン大会。
昨日から、娘はもうやる気まんまんだった。
昨日のお迎えの帰り道。明日はマラソン大会当日だと高らかに宣言した娘は、
「わたしな、ぜったい一等賞になんねん!」
と言いながら園庭を、ほいやー! と言いながら駆け去っていった。
「きょうは、野菜いっぱい食べる! 明日のお弁当もお野菜ばっかりにして!」スーパーではそう宣言すると、なにを食べたら脚が早くなるのか聞いてくる。
「脚が早くなりたいなら、バナナがいいよ。マラソンする人はみんな食べてるんだよ」
野菜もいいけど、消化によく、エネルギーに変換されやすいバナナをおすすめした。
「わたし、バナナめっちゃ食べる!」
スーパーでバナナを買うと、帰りの車の中で娘は2本もバナナを食べた。
そして当日。
「お弁当にバナナ入れてな!」
娘は、バナナを食べたら脚が早くなると信じて疑わない。マラソン大会は午前中だから、走る前に食べることはないと思うけどリクエストに応えてバナナを入れた。もちろん、朝食にもバナナだった。
***
今日は、マラソン大会どうだったのかな。そんなことを思いながら、急いで幼稚園へお迎えに向かった。
幼稚園につくなり娘は、高らかに金メダルをかかげてみせた。
誇らしそうに、嬉しそうに、満面の笑顔で「わたし、何等賞だったと思う?」と聞いてくる。その顔は、一等賞だったとすでに語っている。
「えー? わかんないな、何等賞だったの?」
「わたしな、一等賞やってん!」
その嬉しそうな姿を見ていたら、何等賞だろうと、ぼくまで同じように嬉しくなる。なんにせよ、彼女は一等を目指して、それを達成したのだ。
嬉しそうに笑う娘を、ぼくは抱き上げた。
「あんな、わたしバナナいっぱい食べたやろ?」
娘がぼくの耳元でこっそりと囁いた。
「そしたら、脚がもう止まらんねん。勝手にな、だだだーって動くねん! 止まらんくて、木までバキーって折ったわ!」
それは、バナナじゃなくて下り坂を走っただけじゃないかって思うけど、娘にとってバナナは脚が早くなるスーパーフードだった。ポパイでいうところのほうれん草みたいなもんだ。
食べたら、無敵になる。脚が勝手に動いて、止まらなくなって一等賞になる。
よかった。
こんなに楽しそうな姿を見ることができて。
では、また明日。