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観察するとは先回りをしないということ

「写真撮るからこっちおいで!」
この一言が、娘の涙腺に火をつけた。ご機嫌だったその目からは涙が溢れる。じんわりとふえふえしていたが、そのうちに大声で泣き始めた。

幼稚園のお友達家族と集まったクリスマスパーティでのひとコマ。
大きなホールのクリスマスケーキを前に、みんなで記念写真を撮ろうとしていた瞬間だった。
みんなで外から遊んで帰ってきて、順番に手を洗い、娘が最後にみんなの元へ向かっているちょうどその時のことだった。

結局2〜3分で泣き止み、みんなで楽しく写真も撮ってケーキも美味しく食べた。
子どもが何人も集まればみんなそれぞれの理由で泣いたり笑ったり、騒々しい。本当になんてことのないワンシーン。

だけど、この日に限らず子どもに声をかける時、タイミングをしくじったことで泣かしてしまうことがある。


■子どもを「ちゃんと見る」?

わが家に明確な子育ての方針は特にないが、娘が産まれた時から大切にしていたことがある。
それは”観察”すること。

「子どものことをちゃんと見てくださいね」
なんて、子育てセミナー的なものに参加すればよく言われる。
が、子どもを「ちゃんと見る」というのは具体的な様で実はちっとも具体的じゃない。

文字通り子どもを眺めていても、「ちゃんと見てる」にはならないし。
「見てる」だけじゃ別になんの意味もない。

「ちゃんと見てる」にはある意味全く違う2つの行動があると思っている。
観察すること予防することだ。

僕たち夫婦がこの「ちゃんと見る」を具体的な形で取り入れたのは、娘が産まれて間もない頃のことだった。
産まれたばかりの娘が一日でも早く夜泣きせずに朝まで眠っていてくれるようにと、当時の僕たちは必死だった。
その時に読んでいた夜泣きの本に書かれていたのが「子どもをよく観察して下さい」だった。

子どもが夜に泣いてしまった時、泣いた瞬間にみんな抱っこしてしまう。
でも実は、少しふえふえしただけで実はまだ起きていなかったり、自分の力で眠ろうとしている時もある。それを親が先回りして抱っこしてしまうことでかえって覚醒させ、泣かせてしまうことがあるという。
だから完全に覚醒して泣き出すまで、むやみに抱き上げないでしばらく”観察”する。
僕たちはその言葉を忠実に信じた。
そのうちに少しずつ、「起きた?」と思ったけどそのまま眠る、ということが増えていった。
観察するとは、子どもが何をしようとしているのかを把握することだ。
親の先回りが、子どもの行動を遮ってしまうこともあるから。

一方、危険に関しては先回りして予防をしなくてはいけない。
これもクリスマスパーティの時。
子ども達が外で遊んで家に駆け込んで行った。
ひとりが玄関のドアを開けてするりと入って行く。そのドアが閉まらないように次の子がゆっくりとしまっていくドアの隙間に手を差し込んだ。
危うく手を挟みそうになった所をギリギリで僕が先にドアを開ける。
間に合ってよかったが、子どもがドアに向かって駆け込む様子を見て先回りしていなかったら怪我をしてしまったかもしれない。

子ども達は車が来そうなところでもなんでも、とにかくはしゃぎまわる。
そんな時は危険を先回りして予防してあげる必要があるのだ。こんな時にのんびりと観察なんかしていられない。


こうした危険回避のための予防は、子どもの成長に応じて少しずつ観察に移行してくる。

”信じる技術”でも書いたようにハサミを渡したのなら、手を出さずに最後まで委ねてみる。できない時、子どもは自らヘルプを出すことができるのだ。


そこらへんの見極めは、試行錯誤をしながら、それこそ子どもを観察しながら判断するしかないのかもしれない。

■トリガーを引く前の一瞬の観察


「片付けなさい」「勉強しなさい」「早くこっちに来なさい」「お風呂に入りなさい」「もう寝る時間だよ」
子どもと生活をしていると、色んなシーンで様々なトリガー(引き金)を引くことになる。でも、親の堪忍袋が切れた瞬間にトリガーを引くのは少し早すぎるかもしれない。
トリガーは、子どもがどんな行動をしようとしているのかを観察してから引いても充分に間に合うのだ。
ほんの0コンマ何秒、子どもを観察してから声をかけても遅すぎるなんてことはない。むしろ、そのちょっとの間が余計な一言を思いとどまらせてくれる。

先回りをしようとしたその瞬間。
子どもはいま、その行動を起こさなくちゃなと思っていて、まさにそうしようと自分と戦っているところかもしれない。

【30日チャレンジDay12】

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三木智有|家事シェア研究家
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