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【編集後記】がんとわかったとき、知りたいことがわかる一冊に『乳がん』
編集担当者に担当作品をインタビューする『編集後記』シリーズ。不安に寄りそえる本があればと語る編集担当のH野に今回4回目の改訂を迎える『乳がん』についてインタビューしました!
乳がんとわかったとき、知りたいことがわかる本
🎤「企画したきっかけ・経緯を教えてください」
乳がんは、女性のがんのなかでもっとも多く、年間で9万人が診断されるといわれています。
「がん」と診断されることは多くの人にとって、衝撃的な出来事です。からだの一部を失うかもしれない不安や恐怖は、体験した人にしかわからないものでしょう。
そんな時、不安に寄りそえる本があればと考えたことが、企画のきっかけです。
最初に刊行したのは2012年で、4年ごとに改訂を重ね、今回が4回目の改訂です。医学は日々進んでいるので、改訂のたびに情報を加え、内容が充実してきました。
手術中にもかかわらず……
🎤「制作エピソード(楽しかったor苦労した点)を教えてください」
著者の山内英子医師に本の企画をもちかけたときのことは、いまでもよく覚えています。
ある婦人科医と病気の本をつくっていたとき、次は「乳がんの本を考えている」と伝えたところ、山内先生の名前があがりました。
その場で依頼の電話をしてくださったのですが、山内先生は、「いま手術中ですが、病理の結果を待っているところなので短時間なら大丈夫」と言って電話に出て、ふたつ返事で引き受けてくれたのです。ちなみに刊行時期や詳細は聞かず……
その決断の速さが、とても印象に残っています。
本づくりの過程で、山内先生の決断力や明解さが、ずっと編集作業を助けてくれています。
いまはハワイ大学がんセンターに拠点を移されていますが、2023年までは築地にある聖路加国際病院に何度となく通い、原稿の確認や校正をしていただきました。多忙を極めるなかでも、いつも明るく接してくれる人。長いあいだ仕事をご一緒していますが、イライラしている山内先生を見たことがありません。
まずは正しい知識を身につけよう
🎤「どんな方に読んでほしいですか?」
山内医師は、「はじめに」の中で、読者に向けて次のようなメッセージを書いています。
「今、この本を手に取ってくださっているあなたは、どんな方なのでしょう。今日、診察室で乳がんの診断を受け、目の前真っ暗になりながら、やっとの思いで書店にたどり着いたのかもしれません。大切な人が乳がんと診断され、何かできることはないだろうかと、知識を求めて手に取ってくださったのかもしれません。あるいは、乳がんと診断されてから駆け抜けるように治療を続け、ようやくひと段落、ひたすら背中を押されるように走ってきた自分を振り返り、勉強してみようと考えて、気持ちを奮い立たせているのかもれません。ここにたどり着いてくださり、ほんとうにありがとうございます。」
この内容にもある通り、同じ病名を抱えてもさまざまな状況の方にぜひ読んでいただきたいです。
山内医師のあたたかな視線を感じられる本
🎤「編集担当いちおしの見どころ・注目ポイントを教えてください」
乳がんについて正しい知識を得たいと思っている人に向けた、山内医師のやさしい視線が感じられる本です。ネットにあふれる情報に触れて不安になったとき、この本が灯になればうれしいです。
◎そもそも乳がんはどんな病気?
◎病院選びは、どうすればいい?
◎セカンドオピニオン、どう聞けばいい?
◎自分に合った治療法とは?
ほかにも、治療中におすすめのヨガ、気持ちをリラックスさせる方法、術後の下着、抗がん剤治療中のウィッグの選び方など、治療中の暮らしに役立つ情報も掲載しました。
診断されてすぐに知りたいこと、治療を受けるなかで必要な知識を得たい人におすすめです。
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書名:乳がん
著者:山内英子 著
カテゴリ:健康・医学
シリーズ:よくわかる最新医学シリーズ
発売日:2025/03/01
ISBN:9784074605811
判型・ページ数:A5 ・ 216ページ
定価:1,760円(税込)