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フィリピン人から学んだマインドフルネス

私は香港に住んでいるけれど、最近、フィリピン人から学ぶことが多い。

私がここでいうフィリピン人とは「香港にお手伝いさんとして出稼ぎに来ているフィリピン人の女性たち」のこと。

70年代に香港では外国人家事労働者(ヘルパー)制度が導入され、フィリピン人やインドネシア人の女性が住み込みで家事や育児を行うことが一般化した。だから、香港ではあちこちで、フィリピン人女性を見かける。小さい子供たちを連れているヘルパーさん、買い出ししているヘルパーさんたちだ。

そんな背景も知らずに香港で生活を始めた私はある日曜日「どひゃ!」と度肝を抜かれた。日曜日に町を歩いたら、このありさまだ。

失礼ながら、ホームレスの人たちかと思ったこの女性たちは、「週末を友達と楽しむヘルパーさんたち」だった。住み込みで生活しているため、休みの日曜日は、こうやって狭い住み込みの部屋を出て、屋外で1日中ピクニックでもするかのように仲間と時間を楽しんでいる。

あまりにも堂々と公園や通路を占拠している様子に、最初は「公共の場所で、これは迷惑では?」「日本じゃこれは強制撤去だぜ」と冷たい目で見ていた私。でも、この風景が毎週のことになり慣れて、よく見ると、彼女たちの楽しみ方があっぱれなのだ。

クリスマスの頃は、みんなで真っ赤なクリスマス衣装に身を包みクリスマスソングを歌いながら大盛り上がり、ある日は、カラオケ大会が始まり、惜しげもなく大きな声でカラオケを熱唱。またある時は、この人達は酔っぱらっているのか?と思うほどの高テンションで大爆笑しながら体をこれでもかと動かして踊っている。

「めっちゃ楽しそうじゃん!」 

最初の頃の「この人たち、邪魔なんですが…」という私の嫌悪感は、「うらやましいほど、楽しそう」へと変わっていった。

そんな彼女たち。楽しそうにしているけれど、日本人には想像もできない苦労をしていること、私も少しだけ知っている。

香港で働く友達のフィリピン人は、若い子供たちをフィリピンに残して出稼ぎをしている。毎週末に息子たちと、ビデオ電話することが楽しみ。フィリピンの人にとって海外出稼ぎが、一番稼げる方法らしく、フィリピン人が出稼ぎでよく行く国は「香港かドバイ」なのだという。まるで日本人が語学留学するとしたら「アメリカかオーストラリアかしら」というテンションで、そう教えてくれた。

まだ成人していない子供を国に置いて、海外に出稼ぎなど私には想像できない。そして、香港から母国のフィリピンは飛行機で2~3時間と、そう遠くはない。

「近いから、一時帰国しやすくて、いいね~」

のんきにそう言った私に「もう3年、フィリピンに帰っていないわ」と答えた彼女。稼げる時に稼いでおきたいから、そう気軽には帰らないそうだ。私は香港に移住したばかりだが、4時間で帰れる日本にすぐにでも一時帰国しようとしているのに…。

私から見たら、「すごい苦労」に見えるのだが、「苦労」とは思っていないようだ。そういうことを憂いて嘆くんじゃなく、「今の環境でできること」をしている。そうやって日曜日は、仕事のストレスを発散させ、同じ境遇の仲間たちと楽しい時間を過ごしている。

私の大好きな著者、高野秀行さんの『移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活』にも、南三陸に住むフィリピン人女性たちが登場する。
福島原発事故の後、被災したフィリピン人たちを訪れるが、びっくりするくらいの彼女たち元気さに、著者も度肝を抜かれ、こう考察している。なるほど!

フィリピン女性の明るさ。それは「明るくしていなければかっこわるい」という彼女たちの矜持なのだろう


さて、香港のフィリピン人の彼女たちに話を戻そう。彼女たちを見ていても「大変なことはさ、まぁ、いろいろあるんだけどさ、今を楽しもうよ」と私が教えられているようにすら感じる。

最初の頃は嫌悪感を抱いていた、週末に公共エリアを占拠して楽しむフィリピン人たち。最近の私は「仲間に入りたい」と羨望のまなざしで彼女たちを見ている。

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ほりとも@香港在住ライター
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