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SaaS with Service - "ソフトウェアxコンサル"の可能性

2018年はSaaS元年

SaaSが米国で普及し始めてから15年以上経ち、2018年は日本でもレイトマジョリティー層まで広がった「SaaS元年」だった。

弊社の投資先でもあるスマートキャンプ社がまとめた、職種別で区分けされた「Horizontal SaaS」サービスのカオスマップは以下の通り。見事に様々な領域が埋め尽くされており、本当に元年なのかと言いたくなるレベルである。

ホワイトスペースがなくなっていそうに見えるHorizontal SaaSだが、この記事ではこれから増えるのではないかと考える、Horizontal 2.0とでも言うべき「SaaS with Service」というモデルの可能性について考察してみた。

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B2B SaaSの次のトレンドは?

VCファンドの組成が相次いでいるのに伴って、2019年もSaaSスタートアップの資金調達環境は良好とみられる。ただ、上記のカオスマップを見た時にどこがホワイトスペースなのか、次のトレンドは何なのかを考える必要がある。

米国でのSaaSの活用状況と日本での現状業務を比較分析すると、業界に特化した「Vertical SaaS」、特に医療、法律、建築、不動産などの分野は余白が大きい(現状業務で使われているExcelやWordというかなり手強い競合はいるが…笑)。ただ、業界特化であるため、サービスによってはそもそもの市場規模が小さくなりやすいという難点もある。

そこでもう一度Horizontal領域を見た時に、ふと考えた。
ソフトウェアの提供だけでは解決されていない企業の課題は実は多く、ソフトウェアにマンパワーのサービスが加わることで、一気通貫のソリューションになりえるのではないか?

このことからから、オンボーディング/トレーニングプログラムや業務代行など、コンサル・BPOサービスの要素がSaaSと組み合わさった「SaaS with Service」というモデルの事業が増える可能性があると考える(名称は筆者による勝手な命名)。

SaaSビジネスにおけるコンサルサービスの位置づけ

一般的にサブスクリプション事業において、コンサルサービスを提供することはあまり好まれない。

創業期のスタートアップだとキャッシュを回したりプロダクト開発の資金のためにコンサルで稼ぐケースが多いが、コンサル売上は単価が高い反面、①単発プロジェクトになりやすく収益予想が安定しない、②労働集約的で利益率が低くなりやすい、という難点がある。そのため、PMFが見えてきたらコンサルサービスは捨てていき、依存度を低くすべきと言われる。サブスクリプション売上割合が80%以上であることが目安とされる。

確かに収益基盤の安定化はSaaSビジネスの大きな魅力である。一方で、SaaSはあくまで顧客の課題に対するソリューションの一つであり、ソフトウェアだけでは解決しきれない課題も少なくない。中にはソフトウェアに加えて、人の手を介在して初めて解決される課題もある。

分かりやすい例が、弊社投資先であり、私の担当企業でもあるPR Tableが取り組む課題

事例:採用ブランディングの課題を解決するPR Table

エモみ溢れるPR Tableのサービス紹介LP

新卒一括採用が終焉を迎えつつあり、採用競争が激化する中で多くの大企業は人材の確保に苦戦し、あの手この手で就活生・転職者にリーチしようとしている。しかし、人事や広報担当者は採用ブランディングを重要視する一方で、発信方法や内容、効果の有無が分からず、自社の魅力を採用候補者に伝えきれていない。

Business Insiderより

簡単に言うと「大企業は候補者にモテたいけど、モテるための方法・手段が分からない」という課題がある。それに対してPR Tableはコンテンツ製作管理SaaSを提供する一方で、最初の企画段階のコンサルやコンテンツの製作代行も行っている。コンサルや製作代行までやっている理由はシンプルで、発信すべき内容・方法が分からない大企業にとってSaaSを利用するだけでは解決できない課題だからだ。

単発になりがちで収益予想が難しいコンサル売上の短所については、SaaS+コンサル・製作代行という料金プランを作ることで、コンサル売上をSaaSのリカーリング売上に組み込んだ。また、このプライシングによってARPU(Average Revenue Per User)を大幅に上げている。初期はSMBが多かった顧客層は、今ではエンタープライズにシフトしており、SaaS with Serviceモデルの成功例と言える。

メリット・デメリット

それでは、SaaS with Serviceモデルはメリットばかりなのか?私の意見として、メリットは多いが、デメリットも理解した上で、そのビジネスに向いているのかを検討する必要があると考える。

■メリット
ARPUの向上:先述の通り、コンサルをリカーリング売上に組み込むことができれば、アップセルで通常のSaaSビジネスよりも単価を高くすることが可能で、エンタープライズを攻めやすい。ただし、コンサルによって解決される課題が、一時的なものではなく、かつ大きな予算をかける価値があるような深いペインであることが前提となる。

チャーン低下/スティッキネス(粘着度)向上:継続的なコンサルやBPOサービスは顧客の業務の中に組み込まれるため、SaaSと組み合わさって顧客の依存度が高まる。また、これは一般的なSaaSでも言えることだが、利用し始めた初心者ユーザーにとってオンボーディング期間中のトレーニングやサポート体制は離脱の防止に大きく影響する。

BPOから得られる知見:業務代行をやらない限り得られないインサイトを活用して、(場合によっては自社プロダクトを利用することで)顧客目線でSaaSプロダクトの改善に繋げることができる。また、そのようなたまっていく資産は競合に対する参入障壁となりえる。

■デメリット
・スケールメリットが効かないリスク
:営業やコンサルタント1人あたりでカバーできる担当する社数が増えない場合、リソースが少ないスタートアップにとっては事業拡大が難しくなる。

・SMB向けだと採算が合わないリスク:よっぽどROIが高くない限り、SMBが一つのサービスに月数十万円を割くことが難しいので、コンサル人件費の分だけコストが高くなるSaaS with Serviceは採算が取れない可能性が高い。ただし、SMB向けでも伸びているサービスは海外であるようなので要調査。

最後に:SaaS with Serviceの注意点

長々と書いてきたが、このビジネスモデルには事業によって当然向き不向きがあると思う。一般的なSaaSと共通する部分もあるが、SaaS with Serviceをやる時には以下のような問いを考慮する必要があるだろう。

・顧客のどんな課題を解決しているのか?
・ソフトウェアだけでは解決できていない課題なのか?
・大きな予算をかける価値がある「ペインが深い、大きな課題」を解決できるのか?
・それとも優先度が低く、景気が悪くなれば打ち切られる可能性があるのか?

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もし反響があれば、SaaS with Serviceの海外スタートアップ事例や経営レベルで見るべきKPIを気が向いたらまとめようかなーとか考えてます。

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