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私の赤・あなたの赤⑧
違ったんだ。先生の言ってた青の女の子じゃなかったんだ。そうだよな。そんな偶然なんて。
と思いながら、イベント会場の片付けをしていると「あの。」と声が聞こえて振り返ると「青」と答えた子と迷子の女の子が立っていた。
「先程の先生のことですが。」と「青」の子に言われて、僕は先生との思い出を話した。
「だから、僕は青と答える女の子に会ってみたいと思っていたんです。それで、あなたが青と答えたから。てっきりその子かと思って。」と僕が言うとその子は微笑みながら首を横に振った。
「私じゃないですね。でもそんなことが。私も会ってみたいな。青と答えた子に。」
「僕は。その子しかいないと思っていたんだけれど、他にもそう答える人がいるってわかって。なんだか良かったです。」と僕はとっさにそう答えてしまった。
「お姉ちゃん、行こう!」と迷子だった女の子が「青」の子の手を引っ張った。
「じゃ、行きますね。いつもここでバイトをしているんですか?」「いや、ここは単発で。いつもはこの先のデパートそばのカフェでバイトしています。」
「そこ学校の側です。いつかお邪魔しますね。」と「青」の子は言った。そして、「あの、ところで、好きな色はなんですか?」と僕に聞いてきた。
「黄色かな。菜の花の。」と答えるとふんわりとした笑顔で「なるほど。」と言い、会釈をしてその場を去った。
ほんとは僕は青が好きだ。でも青と答えて良いのか戸惑った。それに、なんだか彼女を見ていたら、菜の花が思い浮かんだんだ。畑一面に咲く菜の花。そしたら、言いたくなったんだ。黄色と。
いつかまた会えるのかな。もし会えたのなら、その時は、青が好きだと伝えよう。
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