氷点 三浦綾子
電子書籍化され試し読みサービスされていた餌に食いつき、続 氷点までしっかり読み込んでしまった。学生時代も偉い興奮して読んだ記憶があるけど、ちと宗教色が強くて繰り返し読むことはして来なかった。改めて読んでみるとやっぱり面白いし、考えさせられる作品ですね。
これでもかってくらい陽子が魅力的に表現されているからこそ、不幸な出来事がよりいっそう読者の心を揺さぶる。しかもそんな偶然が続けて起こるかいな、作り話なんじゃ無いの?(はい、作り話です笑)怒涛の展開に読むのを中断するのが難しくなる。清廉潔白な陽子だからこそ精神的に窮地に立たされる状況が萌えまくり。繰り返しドラマ化されるお話ですね。
社会人、親となって読み返すと、改めて大人達の馬鹿馬鹿しい行動、思惑が絶妙にリアルでイライラします。この物語に登場する大人は辰子と高木以外はもっと人生頑張れって言いたくなる人達ばかりです。誰でも起こしがちな小さな失敗も、陽子や陽子の関係者に起こった悲劇を考えると人生もう少し真面目に明るく楽しく過ごさないとダメって痛感します。聖書の言葉なのかも知れませんが、〈一生を終えてのちに残るのは、われわれが集めたものではなくて、われわれが与えたものである〉この言葉を胸に秘めて残りの人生を歩もうと刺激を受けました。反対にこの物語を盛り上げてくれた悪役、反面教師として夏枝の隙の多さ、村井のエロさ、達也の失礼さも自分がそうならないよう意識して生きて行きたいと思います。
最後にやっぱり流氷の表現は魅力的で、夕日に染まる流氷画像を検索してしまいました。動画や写真で綺麗な流氷景色を見てみましたが、この小説の表現に勝る映像は見つかりませんでした。いつか実際にこの目、この耳で現物の流氷も楽しみたいと思います。