マネージャーとしてやめたこと、はじめたこと
マネジメントは正解と言えるものがなく、おかれた環境によって臨機応変にしていかなければなりません。
私自身も約20年、4社で累計100人以上のマネジメントをしてきましたが、初めの12,3年くらいは試行錯誤の連続でした。うまく行ったことも上手くいかなかったことも沢山あります。
ただ、その20年間の中で試行錯誤した結果としてある程度マネジメントの形は出来上がったと思います。
スティーブ・ジョブズは「なにをしないのかを決めるのは、なにをするのかを決めるのと同じくらい大事だ。」と言っていま。
私も試行錯誤の結果、マネージャーとして「やめたこと」、「はじめたこと」があります。
少しでも現場のマネージャーの参考になればと思い書いてみます。
やめた(禁止にした)こと
基本的にマネジメントで大切にしていたのはメンバーの「成長」です。
また、仕事ですから成果を重視してマネジメントをしていました。
自分自身が止めたこともありますが、部署内で禁止にしたこともあります。何をやめ、なぜやめたのか、その後の効果も踏まえて記載していきます。
謝ることの禁止
部下がミスや失敗をした時や、期限・約束を守れない、成果が出ない時など日本人であれば当たり前のように謝ってきます。しかし本当に謝罪って必要ですか?
「反省しないと改善はないだろう」「迷惑がかかったら謝るのが普通でしょ」と考えている方は多いかもしれません。
私自身も内省は必要だと思いますし、次に同じことが起きないように改善は必要だと思っています。ただ、謝るという行為は本当に必要なのでしょうか。
これは私の過去の経験からきています。学生時代に短期留学としてハワイ大学に行った時のこと。私は寝坊をしてしまいクラスに遅れていきました。日本と同様にクラスに入る時に謝りながら入ったところ先生から逆にこんなことを言われました。
「なぜ日本人は遅刻をしたら謝るの?別に授業を受けるのはあなたの権利であって、遅刻したからといって損をしているのはあなたなのだから何も謝る必要はないと思うけど」
正直、目からウロコというか、今まで当たり前にしていた行動について考えさせられた瞬間でした。
仕事においてミスや期限を守らない行為は確かに私や他のメンバーに迷惑をかける行為です。内省をして改善をする必要はあります。
しかし、謝罪をすることに意味はありますか?
かつて私も言ったことがありますが「謝るだけならサルでもできる」「謝ってするなら警察はいらない」「謝るだけでは意味がない」なんて言葉を言ったことはないでしょうか。
そう、このような言葉を返すと相手は「じゃあ何で謝らせたのか」と反感を覚えるだけです。むしろ「反省なんかするか!」と逆の効果すらあります。
仕事において優先順位が高いのは改善です。私は4部署、60名以上のマネジメントをしていました。一つひとつのミスに対してメンバーから謝られていたら時間はいくらあっても足りません。謝る時間があるなら改善策を聞く方が有意義な時間です。そのような理由もあり、メンバーに対して「これからは何かあっても謝罪の言葉はいらないから、原因と改善する方法だけを言いに来てほしい」とお願いしました。
そうすると以外な効果が現れました。実は謝罪しない方が内省をするんです。感情的に怒ると部下は自分を守ろうと条件反射で反対の態度を取りやすくなります。逆に怒らないと本当に申し訳ないという感情で接してきます。
また、上司としては、他部署等に迷惑をかけていた場合は、他部署には自分が謝罪をします。この姿勢が安心感につながるようです。
また、謝罪をすることで許されていた関係ではななくなることで常に改善意識が高まるようになりました。
実は生産性がないどころか生産性を下げる「謝罪の姿勢を求める行為」は必要ないと思います。
略語禁止
課内で流通している略語を禁止しました。
例えば、「ASAP=As Soon As Possible」「読み専=読み取り専用」
「TPP」「徹底(T)的(T)にパクる(P)」などが飛び交っていました。それ以外にもいわゆる社内用語が飛び交います。
20代の社員から60代まで幅広くメンバーがいたのですが、それぞれがそれぞれの年代の略語を話しますが、すぐに理解できない略語は基本禁止。
そのそも若者言葉とは仲間内だけがわかる言葉を使うことで仲間か仲間でないかを分けるための効用として用いられています。確かに同じ部署同士では通じる言葉を使うことで部署内での結束は高まる可能性はありますが、あえて禁止にしました。中途社員は初めに用語を覚えることを強いられるし、私も部署ごとに違う略語を使われるとその度び頭を切り替え中ればならないので混乱してしまいます。1分1秒を無駄にしないためには言葉は正確に相手に確実に伝わることを第一にする事を意識してもらう為に略語を禁止にしました。
社内でのキャリアビジョンを考えるのを止める
その会社では評価の中にキャリアビジョンを記載するシートがあり、5年後、10年後にどうなっていたいかを記載するようになっていました。
なぜかみんな「部長になっている」とか「主任になっている」とかを書くのが自然になっていました。
そもそも離職率が高い会社で1年いれば一人前、3年いればベテラン、5年以上でレジェンドと言われるような会社でしたのでどこまで本気なのかわかりませんでした。
そこでマネージャーになって2年目に「社内のことは書かず、プライベートでも良いので5年後、10年後にどんな人になっていたいかを書いてほしい」と書いてもらうことを変えました。
初めはなかなか正直に書きませんでしたが、じっくり話をすることで恐る恐る書き始めました。ちなみにじっくり話をする際には「基本的にステップアップとして転職をすることをは良い事だと思っている。自分自身も転職をすることでステップアップした経験があるので、転職前提で考えても良い」と伝えました。
ちなみに他のマネージャーにこの話をすると「本当に転職されたらどうするの?」と言われますが、実績として転職を決断する人は10%もいませんでした(他部署の離職率は40%以上)。むしろしっかり人生ビジョンができるので、部署内で成果も出て実際に役職や給与も上がっていくこという結果になるので転職を考える人は少ないのです。
はじめたこと
業務(作業)に係を作る
それぞれの業務に担当者(業務の責任者)を置いている方もいると思いますが、ここでの係はもう少し小さい単位です。
それぞれの社員毎に得意分野に関して係を設定します。
例えばエクセルが得意な社員に関しては、エクセル係、マニュアルを作るのがと行くな社員はマニュアル係等です。つまり困った時に聞く相手を設定するわけです。ポイントはそれぞれの得意分野で設定するところです。得意分野が話を聞くことであれば聞き係とすればよいのです。
これをすることでそれぞれのその分野に関する自己肯定感が上がっていきます。その分野に関しての専門家の地位にする事でその分野に関しては誰にも負けない分野にしようとします。
ただ、気を付けなければいけないのは時が来れば(次が育ったら)手放さなければいけない点です。手放すタイミングを間違えるとそこに固執して次の業務へのステップアップが送れる場合があります。
しかもこの係は後継者を自分で見つける教えるように伝えてあるので人によっては、早く手放す為に後継者の育成をする場合もあります。
あえて責任者としないのは、マネージャーが責任者だからです。ここで責任を放棄したように映るとグリップが効きにくくなってしまうからです。
人事評価以外の評価を作る
会社として決められた評価項目はありましたが、評価期間が1年でした。それではなかなか意識しないので、会社にあった行動指針を踏まえた独自の賞を作っていました。「よくやったで賞」「ナイスアイディア賞」など簡単なものです。決めるのは私自身の独断です。
半年の評価期間で10回賞をもらうと好きな食事が食べられるという仕組みにしていました。
これは、私自身が何をどのように評価しているのかを意識してもらう為にしていました。人は誰もが評価されたいと考えています。しかしマネージャーが何を評価しているのかは意外とわかりにくいものです。そのため、何をどこまですれば評価されるのかを分かってもらう為にしていました。
当然、強く意識する人もいれば、あまり意識しない人もいますが、そこは個性だと思って無理に参加させることはしませんでした。ただ、これでそれぞれの価値観がわかることが重要だと思います。
日報で個別に報告項目を作る
その会社では仕組みとして日報の提出が定められていました。基本的には報告項目もフォーマットとして決まっていたのですが、そこに一項目を追加してもらっていました。
例えば下記のような感じです。
少しミスが多い社員には「今までで一番できたこと」
自身がない社員には「今日自分は天才だと思ったこと」
知識が物足りない社員には「今日知った人に教えたいこと」
ポイントは人それぞれの弱点の部分を肯定的な部分で見つけるように誘導することです。
初めのうちは、毎日書かない(書けない)とか、「ありません」という事になるのですが、小さいことで良いから何か見つけてほしい。絶対何かあるから。と何度も伝えて行うようにしていました。そのうちポツポツと書いてくるのですが、その際にしっかり内容の感想を時には肯定的に、時には参考になりそうなことをフィードバックしていきます。
3カ月もすると毎日何かを見つけ書いてくるようになります。
この辺りになるとそれぞれが自分の中で自信を持ち始めるのでそれが仕事に活かされてきます。
自分のマネジメントに対する価値観を開示する
私は4部署を見ることになった際に自身のマネジメントにおける指針を考えました。
それは以下のような内容です。
そして、これを各部署のマネージャー又はマネージャー候補の社員に開示することにしました。
私自身もプレイングマネージャーとしてタスクを抱えていますし、マネジメントとして各部署毎に費やせる時間は限られています。ある程度先輩社員やリーダー候補の社員にマネージャー的な役割をしてもらう必要がありました。そこで自分自身のマネジメント経験を元に作ったこの20カ条を渡すことでマネジメントとしての軸を一緒にできるでのではないかと思ったわけです。
まず、これを渡したマネージャー、リーダー候補は、私が今までして来ていたマネジメントで行ってきた手法の背景が理解できたようでかなり原落ちしたという感想をくれました。そしてこの指針を元に各自がマネジメントをしてくれることで、マネジメントにかける時間は各段に減ることになりました。自身のタスク時間も確保でき、次のマネージャー育成もできるので「二兎追うものしか二兎は獲れない」状態になったので各段に楽になりました。
マネージャーの参考になれば幸いです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?