漫才ワークショップの奇跡
「お笑い」というコミュニケーションツールを使って、社会で必要な能力を楽しく学んでもらおうという「漫才のワークショップ(以下、漫才WS)」という企画の話。
お友達とコンビを組んで、虫食いになった漫才台本を覚えて練習する。恥ずかしさを乗り越えて、練習の成果をステージの上で発表する。みんなで見て笑って楽しんで、よくできた!と、拍手を送る。
ポイントは、虫食いになっている冒頭の自己紹介と、ラストのボケとツッコミを、コンビでディスカッションして埋めること。完成した漫才を、みんなの前で大きな声で発表すること。
何度か実施させてもらったきた漫才WS、普段は小学生の高学年を対象にやらせて頂くことが多いのですが、生徒数が少ないある山間部の小学校で実施した際、高学年が4人の2コンビとなり、あまりに寂しいから、せっかくだから学校全体でやりましょうとなりました。
学校全体が対象となったので、特別支援学級の生徒も一緒に参加することになったんですが、2週間ほどの練習期間を経て、いざ当日を迎えてみると、特別支援学級の先生から「うちのクラスの生徒たち、練習はしてみたんですが、ちょっと発表までは難しそうです。それなので、今日は見学に回らせて下さい。」と、お話を頂きました。誰よりもその子たちを見ている先生の判断です。「それじゃあみんなの発表を楽しんでください!」となって、漫才の発表が始まりました。
一年生から順番に漫才を発表していきます。ある子は、今日までの練習の成果を台本に忠実に発揮したり、またある子は、元気だけは一等賞のアドリブ盛りだくさんだったり。中には、普段はおとなしいのに、予想を裏切るユーモアセンスで見事に大きな笑いをかっさらう子も。それぞれの個性がステージの上で輝きます。本当に素敵な時間です。
そんな時に、ひとりの男の子が手を挙げて言いました。
「僕もやりたい!」
特別支援学級の男の子でした。
担任の先生と話し合って
「途中でやめたっていい。とりあえず、やってみましょう。」と、
その子の意思を尊重することに。
即席で、相方の川島とコンビを組み、二人の漫才が始まりました。
大人たちは緊張の面持ちで見守りますが、子どもたちはそんなこと関係なしに、ニコニコと二人の登場を待っています。
出囃子が鳴り、ステージに「はいどうもー!」と、元気に登場してきました。
軽快に会話のキャッチボールが行われ、漫才は進み、笑いが起こり、最後の「もういいよ!」がばっちりと決まりました。
笑顔で、元気に、堂々と、最後まで漫才をやり切りました。
見事でした。
達成感と共に戻ってきた舞台袖で、担任の先生が、その子を抱きしめて泣いていました。
これが、『地域におけるお笑いの可能性』だと簡単に言う気はありませんが、
町をどうにかしたくて立ち上がり、市と学校の協力を得て、
みんなで一から組み立てて、最後にこんな瞬間が作れたことは、
本当に嬉しい瞬間でした。
お笑いって、凄い。改めて感じさせてもらいました。
地域を笑いで盛り上げるプロジェクト。
まだまだやれることある。地域におけるお笑いの可能性を確信した、ターニングポイントのお話でした。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?