公園にて

公園にて

噴水の底をくぐる子の眼

へそを突き出して太陽まで乳母車を押す子

鳩の世界の真ん中に座る子

砂を掘って地球の鼓動を聞く子

シーソーに乗って不安定な内部から脱出を夢みる子の体

じゅうがつのあたたかい風のふところ

いのちを激しく持ちこたえる老婆

子の背へ打ちこむ楔のやさしさ

じゅうがつのあたたかい風のふところ

ちきゅうにどっかりと尻をおろす母親

枯葉のけむりをほしがって毛虫を殺し

空と遊んで鳩になりたがり

どろ水につっかて体温を分ける子

どろ水と握手して新しい音をさがす

噴水の底をくぐった子の眼が

右手にやつでの葉っぱと

左手に耳のとれた兎の貯金箱を

しっかりかかえて歩く自分を見ている

枯葉のけむりが

いつのまにか火になって

公園の一角をやきつくしている

詩集「生える」より (5)