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もてあましているわ
もてあましているわ
昼さがり
ダイとリュウが
向き合って眠っている
二〇日ぶりの雨が降りつづく夏
外界を力ずくでしゃ断し
しぶる幼児を眠りの網にまく
たしかにわたしのお腹で息づいた生命
そんなことあったかしらんと人ごとのように
自分達の呼吸で生ききってはいるが
入りこむ余地のないほどピッタリくっついてはいるが
自我がうずきはじめる あした
寄りそう体のすき間に孤高の旗ひるがえり
こころの病気で何年もうつ病の日びを送った わたし
ダイとリュウを産んではじめて
生きて 生きて 生ききる自覚ができたわ
つぎはぎだらけの襖 畳も荒れた田地のようで
カーペットで欠陥を覆うのに大わらわ だけど
育つことは嬉しい破壊力のひめい
こころの病気で何年もうつ病の日びを送った わたし
ダイとリュウを産んではじめて
生きて 生きて 生ききる自覚ができたわ
体もこころも横綱級のひろがりになって
二〇日ぶりの雨が降りつづく夏
外界を力ずくでしゃ断し
しぶる幼児を眠りの網にまく
つかのまのフリータイム
茶碗も洗わず 買物にも行かず
広げきった新聞のうえで
ボソボソ背中を掻き
大きなあくびと
うたた寝
詩集「生える」より (5)