【日記】 小説のいいところ
小説のいいところは、「自分の中で答えが出ていないことも書いていい」ってことじゃないかと思っている。
これがビジネス書やハウツー本だったら、そうはいかない。
「どうすれば営業トークが上手くなるかはわからないんですよねー」と結論づける指南書はやっぱりダメだろうし、読者だって怒り出す。
でも小説を書くというのは、自分では抱えきれなくなった問いを、登場人物と一緒に考えていく作業だと思う。しかも、最後まで書き切った結果、「これって、どうなんだろうねえ」と主人公が物思いにふける場面で終わっても、たぶん許される。きっと作者も読者も、小説に答えを求めていないからだ。
問いを見つめる時間を共有すること。
本を閉じた後、空欄のまま残された答えを、それぞれの人生で考え続ける。そんなきっかけが、小説には詰まっているような気がする。
僕は今まで読んだ小説から、たくさんの魅力的なきっかけをもらった。そして折に触れ、思い出しては考え、想像し、結局答えの出ないまま、また記憶の引き出しにそっとしまう。
そうすることで、何かが劇的に変わるわけではない。でも体の奥にある、根っこみたいな部分が少しだけ深くなった気がする。そうやって伸びた根は、日照が続くなかでも水を吸い上げ、強風にさらされながらも踏ん張る力となる。
だから僕は、「たとえ答えは出なくても、考えたい」ことを肯定してくれる小説という表現が好きだし、そんな物語を書きたいと思う。