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【春秋一話】04月 経営者に必須の資質は真摯さ

2022年4月18日第7140号

 新年度となり4月1日付の人事異動が報道された。本紙4月11日号では南関東支社などで局長昇任予定者のマネジメント研修が行われた記事が掲載されていたが、受講された方々もそれぞれの組織の経営者(マネージャー)としてマネジメントをスタートさせているだろう。
 経営コンサルタントの小宮一慶氏は、経営者に対して3つのことを学ぶよう薦めている。それは「新聞などを通して生きた経済や社会の動きを知る」「経営の原理原則を学ぶ」「何千年もの間、多くの人が正しいと言ってきたことを学ぶ」の3つである。この中の「経営の原理原則を学ぶ」は松下幸之助氏などの優れた経営者の書籍を読むことだが、一番は経営の神様と言われているピーター・F・ドラッカーの書籍を読むことだと勧めている。
 ドラッカーについては10年ほど前にブームとなった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」のことを聞いたこと、もしくは読んだことがある方も多いのではないだろうか。その主人公の女子マネージャーが読んだのが「マネジメント・エッセンシャル版」であり、この中で、ドラッカーは「組織」について「組織が存在するのは組織自体のためではなく、自らの機能を果たすことによって、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためである」と述べている。
 そしてドラッカーは組織運営について、①自らの組織に特有の使命を果たす②仕事を通じて働く人たちを生かす③自らが社会に与える影響を処理するとともに社会の問題の解決に貢献する、というマネジメントの3つの役割を示している。
 ややわかりにくいが、「①自らの組織に特有の使命を果たす」とは、その企業にしかできない商品やサービスを提供すること。「②仕事を通じて働く人たちを生かす」は、言葉どおりに解釈すれば「生かす」とは「有効に利用する」などと捉えられるが、ここで言っている「生かす」とは「活き活きと働く」ということだといえる。そして「③社会の問題の解決に貢献する」とは企業が社会における公器であり、社会の中での責任を負うものということである。
 これを郵便局にあてはめれば、「特有の使命」とは社会のインフラであり、法律によりユニバーサルサービスの提供を義務づけられているという使命だろう。
 コロナ禍においてエッセンシャルワーカーと言われたように人がいなければ成り立たない事業であり、働いている人々が活き活きと働くということはとても重要なことである。そして郵便局の社会の中での存在感は災害時の例を出すまでもなく、さまざまな社会の問題の解決に貢献していることは言うまでもない。
 組織を具体的にマネジメントしていくのがマネージャーである。ドラッカーはマネージャーとしての役割は学ぶことができるものだが、学ぶことができない資質が一つだけあると強調している。その資質とは「真摯さ」である。原文は「インテグリティ(integrity)」という言葉であり、直訳すると「高潔、誠実、清廉」だが、訳者は「真摯さ」という言葉を選んでいる。訳者がこの言葉に込めたのは「誠実で、常に言動が一致し、向上心のある人」ということではないだろうか。
 郵便局の役職者として選ばれている方々はこの「真摯さ」という資質を備えていると信任された方々だ。さまざまな課題に向き合うことがあるだろうが、そのような時こそ経営の原理原則に立ち戻り、是非ともそれぞれの組織の中で活躍されることを祈念する。(多摩の翡翠)

カワセミのコピー


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