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【コラム】追悼 デイヴィッド・リンチ

おはようございます。
天気の良い冬の朝、近所のカフェでこれを書いています。
僕は冬が好きです。
雨が少ないのと、外に出た時にキリっとした空気に触れて気分がリフレッシュできる感じが気に入ってます。

さてそんなコーヒーが最高に美味しい季節に訃報が届きました。
映画監督のデイヴィッド・リンチ氏が亡くなりました。
『カルトの帝王』と呼ばれた映画監督です。
近年はそこまで大きな作品は無かったので若い方には馴染みがないかもしれません。
カルトというと少数のファンに支えられているイメージがありますが、実際には商業的にも成功しており、且つ映画だけでなくドラマでも大きなヒットを生み出しているので、名監督と言えると思います。

フィルモグラフィと作品紹介

全ての作品を書くのは難しいのでいくつかピックアップして書きます。

イレイザーヘッド(1977)

記念すべきリンチの長編デビュー作です。
Wikipediaには超現実的ホラー映画とあります笑
純粋に怖いというより不気味という意味のホラーですね。
全編通して意味はよくわからないのですが、以降全てのリンチ作品に通ずるエッセンスが凝縮されているような作品です。
主演のジャック・ナンスもリンチ作品常連の俳優さんです。
リンチの作りたい世界観を理解し、演じられる俳優さんなんでしょうね。

エレファント・マン(1980)

僕が初めて観たリンチ作品がこれでした。
アカデミー賞にもノミネートされており、商業的にも評価を得た作品と言えるでしょう。
内容は他のリンチ作品と比べると理解しやすい
と思います。
その分残酷さがストレートに伝わると言ってもいいかもしれません。
僕はこの作品を観るとほぼ100%泣いてしまいます。
一度は観ておいて損はない作品だと思いますね。
名優アンソニー・ホプキンスが良い医者役で出ています。笑

ブルー・ベルベット(1986)

前作デューンでファイナルカットの権限を与えられなかったことを反省し、予算削減と引き換えにファイナルカットの権限を得て、リンチ節を存分に発揮した作品です。
数々の賞を受賞し、リンチ自身もアカデミー監督賞にノミネートされています。
映画監督デイヴィッド・リンチの立場を確固たるものにした作品だと思います。
内容的にはリンチ作品の中では筋がわかる方ですが、表現としてはバイオレンスさや不可解さがあります。
個人的にはこの作品が評価されたことで自信を得て、これ以降の作品がより不可解になっていったような気がします。
主演はカイル・マクラクラン。前作デューンもですが、多くのリンチ作品に出演しているリンチ生涯のパートナーと言える俳優です。

ロスト・ハイウェイ(1997)

ちょっと時代が飛びます。この間にツイン・ピークスがあるのですがこちらは後述します。
さてロスト・ハイウェイは「これこそリンチ作品だ!」というファンの方も多い気がしています。
話の筋はぶつ切りで、初見だとなんだかよくわからない映像を観ている間に終わっちゃったという感覚を得ます。
色々なところで言われていますが観た人それぞれの解釈があってよい作品に感じます。
筆者はどちらかというと映像作品として見るべきかなーとは感じます。
色使いなんかに着目して観ると面白い作品ですよね。
あとは音楽。ナイン・インチ・ネイルズというバンドのトレント・レズナーが作っているのですが、その分普通の映画音楽とは異なり印象に残ります。
主演のパトリシア・アークエットは後に『6才のボクが、大人になるまで。』という作品でアカデミー賞を受賞する名優です。

マルホランド・ドライブ(2001)

ロスト・ハイウェイの精神的続編のような作品です。
がロスト〜と異なりカンヌ国際映画祭監督賞受賞など大衆的な評価も得ています。
精神的続編と書いたのはこの作品も明確な筋がないからです。
何が現実で何が夢か、何度も観て考察して意味を見つけるような作品です。
劇場公開時にホームページでリンチ自身がヒントを出していたので、そういう楽しみ方が明確に提示されているんだと思います。
個人的にはリンチの集大成と言える作品な気がします。
そしてリンチが『カルトの帝王』と呼ばれる由縁もここにあるかと。
それくらい難解ですがハマる人にはハマる作品です。
個人的な解釈はまたの機会に書きますが、主演のナオミ・ワッツとローラ・ハリングがとにかく美しいのでそれだけでも観る価値はあると思います。

日本でも大ヒット! ツイン・ピークス(1990)

さてツイン・ピークスに関しては思い入れのある作品なので別項目とさせていただいた。
こちらは映画ではなく連続ドラマ形式の作品です。
日本での放送は1991年。民放ドラマでは『101回目のプロポーズ』や『東京ラブストーリー』が放送されていた時期。
ここまであたかもリアルタイムで観てきたような書き方をしてしまったが、筆者は1991年生まれなのでリアルタイムでは視聴していません。
ただこの頃はドラマブームと共にレンタルビデオ店でレンタルし一気に観るという形式が流行していたらしい。
それとリンチの作るミステリーの相性が良くこの作品自体もヒット
したのだと思います。

筆者は大学生の頃に前述にエレファント・マンを観て母親に「デイヴィッド・リンチってすごいね」と話したところ「ツイン・ピークスが面白いよ」と言われDVDBOXを購入し、一気見しました。
大学生の時分は色々な作品を見漁っていたのだが、その中でもツイン・ピークスは世界観の奥深さ、先が気になる脚本、古き良きアメリカ的映像が相まってどハマりしたのをよく覚えています。

さてこの作品の何が面白いかと言うと不可解な世界観と理解可能なストーリーのバランスが取れている点だと思います。
ここまで書いてきたようにデイヴィッド・リンチという人は意味のわかりやすい作品を創らない人です。一回観て理解できるのはエレファント・マンくらいかと。
そしてブルー・ベルベットのように1つの作品に様々主題を盛り込むので当然内容も複雑になります。
そういった趣向は連続ドラマという形式には不一致に感じます。
そこを補完したのが脚本家のマーク・フロストです。
筆者は観ていないが『ヒルストリート・ブルース』という連続ドラマの原案・制作総指揮を務めたとのことで、ドラマとしての筋を作ることのできる人物のようです。
どうやらリンチとフロストはツイン・ピークスのキックオフ時から意気投合したらしく、リンチの描きたい世界観・主題をフロストが上手くエンターテイメントに調整していったのだと思います。
こういう異なる機能を持ったクリエイター同士が意気投合した作品はだいたい面白くなりますね。

さてこの作品はツイン・ピークスという架空の土地で起きた1つの殺人事件を中心に様々な人間の生き様が描かれていく群像劇です。
群像劇なのでそれぞれに主題があり、複雑に絡まっていきます。
男女の恋愛や友情、夫婦間の問題、麻薬などの社会問題などなど。
ツイン・ピークスは一見平和だが様々な秘密が隠れた閉鎖的な土地なのです。

そんな場所で起きた殺人事件を解決するために1人のFBI捜査官が向かいます。
主人公のデイル・クーパー捜査官です。
このクーパーが何と言ってもカッコいい!
クールでニヒルでダンディ、真剣な表情とニコッと笑った時のかわいげ、人情味もあります。
とにかく魅力的な人物として描かれているのです。
もう僕は途中からクーパー目当てで観ていたと言っても過言ではないです。
(もちろんストーリーも面白い)
操作活動のメモはカセットテープに録音するのだがその時に必ず「ダイアン」と呼びかけます。この仕草もかっこいい。真似したくなります。

クーパー以外の人物も魅力的です。
相棒となるハリーも誠実で正義感溢れていてカッコいいですし、
特にお気に入りはメッチェン・アミック演じるシェリーです。
街のレストランでウェイターとして働いていますがこんなウェイターがいたら毎日通います。
彼女の淹れるコーヒーはなんだか美味そうに見えます。


おわりに

もっと色々と書きたいんですが長くなってしまったのでこの辺りで。最後に、『ツイン・ピークス』のクーパーの一番の好物はブラックコーヒーです。
そして意外にも甘党でドーナツやチェリー・パイも好みます。
僕はアメリカンダイナー的な店に行ったら必ずコーヒーとチェリーパイを頼みます。

たまには窓際の席で外を眺めながらA damn fine cup of coffee with cherry pieを楽しむのはいかがでしょうか。

改めてデイヴィッド・リンチという偉大な映画人に冥福を祈らせていただきます。
黄金の太陽と青空に恵まれた美しい日に。

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