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伝統芸能と向き合うこと
登米市登米町(とよままち)には伝統芸能があり、その中でとよま能のお稽古をつけていただいている。
きっかけは昨年の11月にあった伝統芸能伝承会に参加したことだった。
認知こそしていたが、見るのは初めてだった。
幽玄で幻想的な舞台の上で舞を舞う役者と物語を進行する謡。
その時に見た『猩々』に鳥肌が立った。
『自分もやってみたい』と思い、伝統芸能の関係先に歩いて話を聞きに行き、能の先生と出会い練習に参加できることになった。
能に関してまったく知識のない素人。しかもヨソモノが思いつきで・・・
というところもあり、恐らく先生も「続かないだろう」と思っていたはず。
練習会を見に来てから決めてということで参加させてもらった。
まず初めは謡をひたすら練習する。謡は物語を謡い舞台を進行するもの。
基本の”き”である。・・・がこれがものすごく難しい。
音符が書いていないのに、音があり、感情を混め、起伏を付ける。
見るのは謡本といわれる本のみ。
これには伸ばす長さと強弱は書いてあるが、音にあたる部分は先生の謡を聞いてひたすら反復する。口伝(こうでん)という方法が上達の近道。
毎週水曜日に2時間、基本の曲からはじまる。
最初は本当に難しく、真似しているが違う。何度やっても先生の謡にならない。ただ、繰り返すことで不思議と感覚がつかめてくる。
練習は嘘をつかない。
今年に入り、デビューが出来るというお話をいただき、橋弁慶という物語をひたすら練習し、舞台に立つことが出来た。
本当に、久しぶりに緊張した。
とよま謡曲会は60代で若手といわれる年齢層。
後継者不足で消えてしまう可能性があり、始まった伝承会。
自分が後継者などと恐れ多くて言えないが、紋付を着て舞台に上がり
大先輩たちと一緒に謡う事が嬉しかった。
もっと上手になりたい。
ただそれだけ。
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伝統芸能といわれると敷居が高く、なかなか始めずらいとも思う。
でも素人のヨソモノが始めて続けていけば
いつか、きっと、誰かの目に留まり一緒にやる人が増えるかもしれない。
そう願って、登米町の伝統の灯を消さないようにやっていきたい。