ハーモニカ・メンテナンス講座 【基礎知識編2】
基礎知識編-音のなる仕組み
〜音のくるう理由・アゲミとは〜
説明は複音ハーモニカで行なっていますが、原理はハーモニカ全般で通用します。
ハーモニカ・メンテナンス講座・第2回目となります。前回はハーモニカの部品構成から素材による清掃・洗浄方法の違いなどをご説明させていただきました。今回も引き続き、基礎知識編の第二部となります。
音の鳴る仕組み、音がくるう理由を理解することはハーモニカの調整をする上で重要です。ここでは複音ハーモニカを使用してご説明しますが、基本的な原理は他のハーモニカでも同じです。同じ内容をわかりやすく説明した動画がページ下のYouTubeでもご視聴いただけます。
音の鳴る仕組み
まずはじめに音のなる仕組みに触れてみましょう。
ハーモニカのプレートには最初このように穴が空いています。この穴をリードの窓と呼びます。この窓に下の写真のリードを配置します。
プレートにリードを配置して、リベットでカシメた状態が下の写真、「リードプレート」になるわけです。
リードの窓を通過する時に生まれる風切り音が
ハーモニカの音
下の写真をご覧ください。このリードに息を入れる事で振動して、リードの窓を通過する時に生まれる風切り音がハーモニカの音になります。
見えるリードと見えないリード
下のイラストをご覧ください。これは複音ハーモニカのリードプレートを書いたものです。プレートにはリードが付いていますが、外側から見えているリード、中に入っているリードがあります。
この見えているリードが吸音、中に入っているリードが吹音になります。
このリードと窓の隙間は0.03mm以下ですので、ちょっとした糸くずが挟まっても音が鳴らなくなります。ご注意ください。
空気の流れ
なぜリードの付いている面が違うのか?をご説明しましょう。下のイラストをご覧ください。
どちらもハーモニカのリードを横から見た形です。ハーモニカのリードは一方方向から空気が流れた時に反応して音がなります。
リードが見えている方、これは矢印の方向の空気の流れ、つまり息を吸った時にリードが反応して音がなります。
逆にリードが内側についている方、これは息を吹いた時にリードが反応して音が鳴ります。
吹いて鳴るリードは吸っても鳴らないということになります。
複音ハーモニカは吹いてドミソ、吸ってレファラシが交互に配列されていますので、隣の音が同時に鳴らないようになっているのです。
アゲミとは
下のイラストを見ると、空気の入り口に少し隙間がありますよね。この隙間(リードの姿勢)を「アゲミ」といいます。
アゲミの適正量
アゲミの適正量についてお話ししましょう。
リードのアゲミが少ないと吹き詰まりしやすくなったり、逆に多いとスカスカして音の立ち上がりが遅くなったり。アゲミが全くないと音が鳴りません。
一般的に適正なアゲミはリード一枚分の高さが推奨されています。ただ、低音部と高音部ではリードの厚さが異なりますので、厚い低音のリードはその厚みの分、薄い高音部のリードはその分だけアゲミをつけます。
アゲミは全音域で一定というわけではないのです。低音から高音にかけて少なく設定します。調整方法は次回以降のこの講座でご説明します。
下のイラストを参考にしてください。
リードの長さや形状で異なる音程
実際にリードプレートを見てみると、低音側はリードが長く、先が厚くなっていたり、高音側に行くにしたがって短く、薄くなっていることがわかりますね。
下のイラストを見てください。
リードは根本部分を支点として振動します。リードは前後の重量バランスや長さで音の高さが決まってきます。例えば長いリードは振動数が少ないですね。
そうするとリードの窓を通過する速度が遅くなるので、音は低くなります。
逆に短いリードは振動数が多い分、窓を通過する速度が速くなるので、音が高くなります。
また、リードのコシを削って弱くしたり、頭を厚くして重りにすることで音程を低くすることもできます。
反対にリードの先を削って頭を軽くする事で音程を高くすることもできます。これはハーモニカの調律の原理にもつながりますので、覚えておいてください。
音がくるう理由
リードは根本部分を支点として高速で振動します。
リードは金属でできていますから、繰り返し振動することで、この根本の部分が金属疲労を起こして弱くなっていきます。
根本が弱くなると、結果としてリードの振動数が少なくなり、音が下がっていきます。この「金属疲労」が音のくるう原因となります。
では、どんな時にみなさんは音がおかしいと感じるのかを複音ハーモニカでご説明します。複音ハーモニカは上下2段になっていますが、この上下には実は同じ音程の音が入っています。例えばドなら上にも下にもドが入っています。ただ全く同じではありません。
下段の音に対して、上の音は、ほんの僅かだけ音程を高くしてあります。これを同時に鳴らす事で、音に波が生まれます。この音色を「トレモロ」といいます。
このトレモロの波の量が金属疲労を起こした状態になると変化してしまいます。
例えば、下段のリードが金属疲労で音が下がってきた場合、上下の音程差が大きくなって、トレモロが大きすぎて両隣と異なってしまう事から不快な音色に感じます。
逆に上段のリードが金属疲労で音が下がってきた場合、上下の音程差がなくなり、トレモロが全く無くなって他の音と比べて不自然になります。
この他にも片方だけゴミが詰まる、またはアゲミが無くなってしまったなどの理由で片方のリードしか鳴らなくなってしまったなどがありますが、おおよそ音がおかしいと感じるのはこういった時だと思います。
複音ハーモニカ以外のハーモニカはスケールを吹いていて、どこかのピッチが低く感じたり、アゲミが変化して吹きづらくなったりした時におかしいと感じるでしょう。クロマチックハーモニカではバルブのトラブルも多いですね。
今後について
次回はさらにもう少し踏み込んで、「アゲミの調整方法」、「調律について」をご説明したいと思います。
調律の原理は文章でお伝えできそうですが、実際の作業はやはりYouTubeで確認して見ていただくのが良いと思いますので、是非トンボ楽器YouTubeチャンネルの登録をお願い致します。
では次号でまたお会いしましょう。
この内容を動画でご覧になりたい方はこちら↓
TOMBO-ism
文章:長井