私的偏愛録 其の十五 穂村弘『シンジケート』

 感情がぐちゃぐちゃになる時がある。大人になった今の方が、めちゃくちゃある。
 そんな時につぶやく短歌がわたしには、ある。

「サバンナの象のうんこよ聞いてくれ
   だるいせつないこわいさみしい」

今日職場でいやなこと言われたなぁ
「だるいせつないこわいさみしい」
周りは転職したり結婚したり子育てしたり自分の人生をちゃんと歩んでいるなぁ
「だるいせつないこわいさみしい」
なのにわたしは何となく仕事していまだに実家に居座っているなぁ
「だるいせつないこわいさみしい」
こんな状態のわたしが悩んだりぶつくさ文句言ったりしてもなぁ
「だるいせつないこわいさみしい」
あ、申し込んでたライブチケット取れなかった…「だるいせつないこわいさみしい」

 心の内は誰にも知られたくないけれど、思っていること、感じていることを聞いてほしい時がある。
 こういう時に、遠くサバンナで暮らす象がしたうんこ(わたしは放置されて乾燥してきたくらいのうんこがいい)に向かってつぶやきたくなるのだ。

だるさせつなさこわささみしさをよく知った
象のうんこを探しています

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